喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第2章 ♣海の女神♣
「海に―入る?。それって」
何故か、声が戦慄いた。
「自殺しようとしたのよ」
「自殺―」
淡々と他人事のように語る彼女の表情や態度からは想像できない。しかし、こんな場面で、わざわざ彼女が嘘を並べ立てるとは思えない。これが他の見るからに悠理の気を惹こうとする女であれば、別だが。眞矢歌は彼の気を惹こうなどという思惑は微塵もないどころか、思いつきもしないようだ。
これはこれで、悠理としては至極残念なことだけれど。
いや、そういう問題ではなく、この儚げで物静かな女がそんな烈しい感情を秘めていること自体、信じられない。
眞矢歌が小さな吐息をつく。
「まるで流行らない演歌のような話だけど、聞いてくれます?」
眼線で訊ねられ、悠理もまた無言で頷く。
「私ね、これでも恋人がいたんです」
〝これでも〟はないだろうと思う。眞矢歌ほどの美人なら、彼氏の一人や二人いても、全然不思議はない。
そこで、悠理はその話にふと違和感を憶えた。
「でも、眞矢歌さんは男に対して免疫がなかったんじゃ―」
我ながら何という表現かと言葉にしてからすぐ、今し方の科白を引っこめたい想いに駆られたが、時は既に遅しである。
だが、眞矢歌の方は話に気を取られているらしく、悠理の科白について別段、拘っている様子はない。
「相手は一つ上の先輩。同じ高校の男の子だったんです。私はサッカー部のマネージャーをしていて、先輩はキャプテンをしていました。結構カッコ良くて、その人を好きな女の子も大勢いたくらい」
眞矢歌の瞳は遠かった。そのはるかなまなざしは水平線よりももっと彼方―かつて彼女が高校生だった頃を映しているのだろう。
何故か、声が戦慄いた。
「自殺しようとしたのよ」
「自殺―」
淡々と他人事のように語る彼女の表情や態度からは想像できない。しかし、こんな場面で、わざわざ彼女が嘘を並べ立てるとは思えない。これが他の見るからに悠理の気を惹こうとする女であれば、別だが。眞矢歌は彼の気を惹こうなどという思惑は微塵もないどころか、思いつきもしないようだ。
これはこれで、悠理としては至極残念なことだけれど。
いや、そういう問題ではなく、この儚げで物静かな女がそんな烈しい感情を秘めていること自体、信じられない。
眞矢歌が小さな吐息をつく。
「まるで流行らない演歌のような話だけど、聞いてくれます?」
眼線で訊ねられ、悠理もまた無言で頷く。
「私ね、これでも恋人がいたんです」
〝これでも〟はないだろうと思う。眞矢歌ほどの美人なら、彼氏の一人や二人いても、全然不思議はない。
そこで、悠理はその話にふと違和感を憶えた。
「でも、眞矢歌さんは男に対して免疫がなかったんじゃ―」
我ながら何という表現かと言葉にしてからすぐ、今し方の科白を引っこめたい想いに駆られたが、時は既に遅しである。
だが、眞矢歌の方は話に気を取られているらしく、悠理の科白について別段、拘っている様子はない。
「相手は一つ上の先輩。同じ高校の男の子だったんです。私はサッカー部のマネージャーをしていて、先輩はキャプテンをしていました。結構カッコ良くて、その人を好きな女の子も大勢いたくらい」
眞矢歌の瞳は遠かった。そのはるかなまなざしは水平線よりももっと彼方―かつて彼女が高校生だった頃を映しているのだろう。