
喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第1章 ♣ここではないどこかへ♣
入倉実里(みのり)と悠理はまさに数奇な縁(えにし)で結ばれていた。悠理の妻であった早妃を実里が車で撥ね、早妃は死んだ。当時、早妃は妊娠七ヶ月であった。もとより実里に非はなく、早妃の方が路上にふらふらと彷徨い出て、実里は急ブレーキを踏んだのに間に合わなかった。実里はすぐに救急車を呼び、同乗して病院まで付き添い可能な限りの誠意を尽くした。
それでも、悠理は実里を許さず、彼女にストーカー紛いに付きまとった挙げ句、会社から帰宅途上の彼女を襲い、レイプした。その結果、実里は妊娠したのだ。
すべてが偶然にすぎなかったように思えるが、実は最初から運命づけられていたのではないか。この頃、悠理はそんなことを考えるようになった。早妃も実里も自分も、出逢うべくして出逢い、別れるべくして別れたのだろう。
早妃の墓参りに来ていた実里は、その場で産気づいた。その場に悠理が居合わせたのもまた、ただの偶然であったとは思えない。産気づいた実里を悠理は近くの病院まで運び、夜通し出産に付き添った。
今から思えば、それもまた天の配剤、いや、我が子に生涯父の名乗りはできない彼を天の神が憐れんで下さったのかもしれない。だから、ほんの一瞬、我が子を腕に抱くことを許して貰えたのだろう。
あの日、悠理は実里の無事な出産を見届け、我が子を腕に抱いた。その後でそっと病院を出て、二度と実里にも我が子にも逢わぬ覚悟で背を向けたのだ。
あれから七ヶ月が経った。子どもも随分と大きくなっているに違いない。我が子の顔を見たのはほんのわずかの時間にすぎなかったけれど、彼は一日として、あの幸福なひとときを忘れたことはなかった。腕に抱いたときの壊れそうなほどの脆さ、小ささ。
しかしながら、しっかりと握りしめた可愛らしい拳に自分の指を差しいれた時、存外に強く握り返してきたときの赤児の生命力。そのすべてが忘れがたい記憶となって、いまだに悠理を幸せな気分にもするし、これ以上はないというほどに苛む。
叶うならば、今すぐにでも飛んでいって、我が子をこの腕に力一杯抱きしめたい。自分のたった一人の子を産んでくれた実里と子どもと親子三人で新しい家族を作りたい。
それでも、悠理は実里を許さず、彼女にストーカー紛いに付きまとった挙げ句、会社から帰宅途上の彼女を襲い、レイプした。その結果、実里は妊娠したのだ。
すべてが偶然にすぎなかったように思えるが、実は最初から運命づけられていたのではないか。この頃、悠理はそんなことを考えるようになった。早妃も実里も自分も、出逢うべくして出逢い、別れるべくして別れたのだろう。
早妃の墓参りに来ていた実里は、その場で産気づいた。その場に悠理が居合わせたのもまた、ただの偶然であったとは思えない。産気づいた実里を悠理は近くの病院まで運び、夜通し出産に付き添った。
今から思えば、それもまた天の配剤、いや、我が子に生涯父の名乗りはできない彼を天の神が憐れんで下さったのかもしれない。だから、ほんの一瞬、我が子を腕に抱くことを許して貰えたのだろう。
あの日、悠理は実里の無事な出産を見届け、我が子を腕に抱いた。その後でそっと病院を出て、二度と実里にも我が子にも逢わぬ覚悟で背を向けたのだ。
あれから七ヶ月が経った。子どもも随分と大きくなっているに違いない。我が子の顔を見たのはほんのわずかの時間にすぎなかったけれど、彼は一日として、あの幸福なひとときを忘れたことはなかった。腕に抱いたときの壊れそうなほどの脆さ、小ささ。
しかしながら、しっかりと握りしめた可愛らしい拳に自分の指を差しいれた時、存外に強く握り返してきたときの赤児の生命力。そのすべてが忘れがたい記憶となって、いまだに悠理を幸せな気分にもするし、これ以上はないというほどに苛む。
叶うならば、今すぐにでも飛んでいって、我が子をこの腕に力一杯抱きしめたい。自分のたった一人の子を産んでくれた実里と子どもと親子三人で新しい家族を作りたい。
