
喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第3章 ♣海ほたる舞う夜♣
「向井くーん」
「理クンだぁ」
あちこちで歓声が上がり、悠理は信じられない想いで眼前の光景を見つめた。
四十歳ほどから小学生までの十数人の女性たちが今、自分を取り込んでいる。最前列で眼をキラキラさせている幼い少女二人の顔には確かに見憶えがあった。例のコンビニ前で悠理を俳優の向井理と間違えた小学生たちだ。
「あ、あの、これは何の騒ぎですか?」
戸惑い気味に訊ねると、またどこかでキャーと歓声が上がった。
女性ばかりの集団の中から、十七歳くらいの少女が進み出る。
「私たち、今度、向井さんのファンクラブを作ったんです。会報誌も不定期だけど、発行しようと思ってます。それで、記念すべき創刊号に向井さんの写真とインタビュー記事を是非入れさせて頂きたくて」
と、横から例のお下げ髪の小学生が悠理を見上げた。
「私のお姉ちゃん。この間、お兄さんのサインを貰って帰ったら、もう失神するくらい歓んだのよ」
悠理はガクリときて、お下げ髪の女の子と傍らの女子高生を代わる代わる見つめた。姉と紹介された女子高生は頬を紅潮させ、熱っぽいまなざしで悠理を見つめている。
「折角だけど、俺、そういうのは好きじゃないっていうか、あんまりやって欲しくない―」
ぼそぼそと言いかけると、また、どこかで悲鳴のような声が聞こえた。
「向井クンが喋った」
「本当に、そっくりさんなの?」
「声まで似てるぅー」
〝そっくりさん〟と判っていながら、何故、彼女たちが自分を〝向井クン〟と呼ぶのか今ひとつ理解できない悠理である。
「向井くーん」
「理クンだぁ」
あちこちで歓声が上がり、悠理は信じられない想いで眼前の光景を見つめた。
四十歳ほどから小学生までの十数人の女性たちが今、自分を取り込んでいる。最前列で眼をキラキラさせている幼い少女二人の顔には確かに見憶えがあった。例のコンビニ前で悠理を俳優の向井理と間違えた小学生たちだ。
「あ、あの、これは何の騒ぎですか?」
戸惑い気味に訊ねると、またどこかでキャーと歓声が上がった。
女性ばかりの集団の中から、十七歳くらいの少女が進み出る。
「私たち、今度、向井さんのファンクラブを作ったんです。会報誌も不定期だけど、発行しようと思ってます。それで、記念すべき創刊号に向井さんの写真とインタビュー記事を是非入れさせて頂きたくて」
と、横から例のお下げ髪の小学生が悠理を見上げた。
「私のお姉ちゃん。この間、お兄さんのサインを貰って帰ったら、もう失神するくらい歓んだのよ」
悠理はガクリときて、お下げ髪の女の子と傍らの女子高生を代わる代わる見つめた。姉と紹介された女子高生は頬を紅潮させ、熱っぽいまなざしで悠理を見つめている。
「折角だけど、俺、そういうのは好きじゃないっていうか、あんまりやって欲しくない―」
ぼそぼそと言いかけると、また、どこかで悲鳴のような声が聞こえた。
「向井クンが喋った」
「本当に、そっくりさんなの?」
「声まで似てるぅー」
〝そっくりさん〟と判っていながら、何故、彼女たちが自分を〝向井クン〟と呼ぶのか今ひとつ理解できない悠理である。
「向井くーん」
