喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第3章 ♣海ほたる舞う夜♣
眞矢歌はまだ低い声で笑いながら言った。
「私、もう三十を過ぎてるのよ」
「嘘だろう。どう見たって、二十代にしか見えない」
悠理は改めて眼の前の眞矢歌を見る。楚々とした印象が強いせいかもしれないが、三十を超しているようには到底見えなかった。
「それで、幾つなの?」
「三十一」
「何だ、それじゃあ、二十代と変わらないじゃないか」
眞矢歌が小さな吐息をついた。
「悠理さんは二十三歳ってことよね」
「ああ、秋が来たら、二十四になるけどね」
眞矢歌が年齢差を理由に身を退こうとしているのなら、少しでも歳の差はカバーしておいた方が良い。
「私の方が八つも年上なのよ? 幾ら私があなたを好きだと思っていても、はい、そうですかと言えるものではない。そのことは判るでしょう」
まるで駄々っ子を宥める口調で諭され、悠理はついカッとなった。
「八つくらいの歳の差がどうだっていうんだ? 世の中にはもっと歳が違う恋人や夫婦だっているじゃないか」
「確かにそう、あなたの言うとおりね。でも、私があなたの期待に応えられないのはそれだけが理由ではないってことも判るはずよ」
「―病気のこと?」
そう、と、眞矢歌が頷く。
「悪性ではないにせよ、私はいつも爆弾を身体の中に抱えているようなものだわ。今はこうやって元気で普通に暮らしていられるけど、いつどうなるかだって判らない。もちろん、手術すれば、また健康にはなれるけど」
「それなら、良いじゃないか。俺は君が病気で寝ていたって、看病くらいはするよ」
「そういう問題ではないのよ。悠理さん、この間も、ここで言ったはずよね。私にはこれから先、何があっても、子どもは生めないの。単に子どもができにくい体質とかならまだしも、赤ちゃんを産むことができない身体なの」
予想外の言葉に、悠理が眼を見開いた。
「私、もう三十を過ぎてるのよ」
「嘘だろう。どう見たって、二十代にしか見えない」
悠理は改めて眼の前の眞矢歌を見る。楚々とした印象が強いせいかもしれないが、三十を超しているようには到底見えなかった。
「それで、幾つなの?」
「三十一」
「何だ、それじゃあ、二十代と変わらないじゃないか」
眞矢歌が小さな吐息をついた。
「悠理さんは二十三歳ってことよね」
「ああ、秋が来たら、二十四になるけどね」
眞矢歌が年齢差を理由に身を退こうとしているのなら、少しでも歳の差はカバーしておいた方が良い。
「私の方が八つも年上なのよ? 幾ら私があなたを好きだと思っていても、はい、そうですかと言えるものではない。そのことは判るでしょう」
まるで駄々っ子を宥める口調で諭され、悠理はついカッとなった。
「八つくらいの歳の差がどうだっていうんだ? 世の中にはもっと歳が違う恋人や夫婦だっているじゃないか」
「確かにそう、あなたの言うとおりね。でも、私があなたの期待に応えられないのはそれだけが理由ではないってことも判るはずよ」
「―病気のこと?」
そう、と、眞矢歌が頷く。
「悪性ではないにせよ、私はいつも爆弾を身体の中に抱えているようなものだわ。今はこうやって元気で普通に暮らしていられるけど、いつどうなるかだって判らない。もちろん、手術すれば、また健康にはなれるけど」
「それなら、良いじゃないか。俺は君が病気で寝ていたって、看病くらいはするよ」
「そういう問題ではないのよ。悠理さん、この間も、ここで言ったはずよね。私にはこれから先、何があっても、子どもは生めないの。単に子どもができにくい体質とかならまだしも、赤ちゃんを産むことができない身体なの」
予想外の言葉に、悠理が眼を見開いた。