喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第3章 ♣海ほたる舞う夜♣
眞矢歌の白い顔には哀しげな微笑が漂っていた。
「あなたの身の上話を聞かなければ、私はもしかしたら、あなたの告白を受け容れていたかもしれない。でも、あの話を聞いた後では、どうしても受け容れられないわ」
「何で―、何でそんな風に思うんだ?」
眞矢歌の視線が真っすぐに悠理を射貫く。
「何故なら、あなたは誰よりも家族を―子どもを欲しがっているからよ。もっとふさわしい言い方をすれば、あなたには子どもが必要だわ」
眞矢歌はまた吐息をついて、眼の前にひろがる海に視線を移した。海を幾筋もの光跡が走る。光が輪を描き、乱舞する。まさに、自然の織りなす、世界一の魔術師ですら作り出せない最高の幻術(イリユージヨン)だ。
「俺には―子どもが必要」
眞矢歌の言葉は、予想外の衝撃を彼にもたらした。
だが、果たして本当にそうなのだろうか。愛しい女よりも、やっと見つけた俺の女神よりも、俺には子どもが必要だというのだろうか。
確かに、子どもは欲しい。前妻早妃との子どもを失い、実里との間の子どもは生涯父子の名乗りはできない。誰はばかることなく我が子と呼び、この腕に抱きしめられる子ども、その成長を一日、一日、側で見守れる子ども。
悠理は何より誰より子どもを必要としているはずだった。
だが、今、改めて、これから生まれるであろうかもしれないまだ見ぬ我が子と、眼の前の眞矢歌のどちらを必要かと訊ねられたら、心は迷いなく女を選ぶと告げていた。
眞矢歌は俺にとって必要な存在だ。
当の眞矢歌本人から疑問を投げかけられたことで、かえって悠理の心はこの時、はっきりと決まった。
「俺は未来で得られるかもしれないものより、今、側にある大切なものを選びたい」
半月が紫紺の空を飾り、白い浜辺を淡く照らし出している。月明かりに縁取られた眞矢歌の白い面は神々しいほどまで美しかった。
「あなたの身の上話を聞かなければ、私はもしかしたら、あなたの告白を受け容れていたかもしれない。でも、あの話を聞いた後では、どうしても受け容れられないわ」
「何で―、何でそんな風に思うんだ?」
眞矢歌の視線が真っすぐに悠理を射貫く。
「何故なら、あなたは誰よりも家族を―子どもを欲しがっているからよ。もっとふさわしい言い方をすれば、あなたには子どもが必要だわ」
眞矢歌はまた吐息をついて、眼の前にひろがる海に視線を移した。海を幾筋もの光跡が走る。光が輪を描き、乱舞する。まさに、自然の織りなす、世界一の魔術師ですら作り出せない最高の幻術(イリユージヨン)だ。
「俺には―子どもが必要」
眞矢歌の言葉は、予想外の衝撃を彼にもたらした。
だが、果たして本当にそうなのだろうか。愛しい女よりも、やっと見つけた俺の女神よりも、俺には子どもが必要だというのだろうか。
確かに、子どもは欲しい。前妻早妃との子どもを失い、実里との間の子どもは生涯父子の名乗りはできない。誰はばかることなく我が子と呼び、この腕に抱きしめられる子ども、その成長を一日、一日、側で見守れる子ども。
悠理は何より誰より子どもを必要としているはずだった。
だが、今、改めて、これから生まれるであろうかもしれないまだ見ぬ我が子と、眼の前の眞矢歌のどちらを必要かと訊ねられたら、心は迷いなく女を選ぶと告げていた。
眞矢歌は俺にとって必要な存在だ。
当の眞矢歌本人から疑問を投げかけられたことで、かえって悠理の心はこの時、はっきりと決まった。
「俺は未来で得られるかもしれないものより、今、側にある大切なものを選びたい」
半月が紫紺の空を飾り、白い浜辺を淡く照らし出している。月明かりに縁取られた眞矢歌の白い面は神々しいほどまで美しかった。