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喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編

第3章 ♣海ほたる舞う夜♣

 浜辺に群れ咲く浜ゆうを月光がひっそりと浮かび上がらせている。時折、海を渡ってくる風にたおやかな花が揺れる。
「本当にそれで良いの?」
 眞矢歌の声もまた浜辺の花のように揺れた。
「俺自身が良いと言ってるんだから、良いんだ」
 眞矢歌はそれに対して何も言わなかった。
 悠理はゆっくりと両腕を回し、眞矢歌を引き寄せる。眞矢歌も素直に彼の腕に身を委ねた。
 彼女を腕に抱いた刹那、あの例えようもない香り、海辺に咲く純白の花を彷彿とさせる香りが彼をすっぽりと包んだ。まるで芳香そのものに抱(いだ)かれているような錯覚は、彼をうっとりと酔わせる。
 この体勢が恥ずかしいのか、眞矢歌はうつむきがちだ。その顎をとらえ、悠理は心もち持ち上げる。
 静かにそっと唇を触れ合わせると、女の華奢な身体が小さく震えた。まるで、親鳥の腕の中で身を震わせる小さなひな鳥のようだ。
 最初は小鳥が啄むように、蝶の羽根が掠めるように軽く触れ合わせるだけ。次第に深めていって、眞矢歌の上唇を自分の舌で舐める。
 次は下唇。上唇・下唇の上をそれぞれ時間をかけて、ゆっくりとなぞる。
 口紅を塗るように、ゆっくりと丹念に。
 下唇を軽く噛むと、またか細い肢体がピクンと撥ねた。背中を宥めるように大きな手のひらで撫で下ろしてから、やっと開いた隙間から慎重に舌を差しいれる。
 逃げる舌をやや強引に絡め取り、後は一挙に烈しく奪った。
 どれほどの間、烈しい口づけを繰り返していたのか。漸く唇を離した時、眞矢歌は荒い息を吐きながら、眼を潤ませていた。長すぎる口づけのせいで、せっかく刷いた紅ははげ落ちてしまい、唇はふっくらと扇情的に腫れている。

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