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喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編

第3章 ♣海ほたる舞う夜♣

 このまま押し倒して、強引に最後まで奪ってしまいたい。悠理の身体は既にはっきりと欲望の徴(しるし)を表している。だが、悠理は今ここで、眞矢歌の身体を奪うつもりはなかった。
 今、抱いてしまえば、歯止めはきかなくなるだろう。きっと、今夜中、眞矢歌の身体を幾度も奪うことになる。
 だが、それは彼女を軽く扱うことになりかねない。かつて眞矢歌を都合良く利用し、無情にも棄てていった男たちと何ら変わりない。
 本当に惚れた大切な女だからこそ、尊重してやりたいのだ。きちんとけじめをつけるまでは、抱かない。それが悠理なりの眞矢歌に対する愛情と誠意の示し方なのだ。
 濃厚な口づけのために、眞矢歌のきちんと結い上げた髪が乱れてしまった。頬にはらりと落ちた前髪が妙に艶めかしい。
 悠理はその前髪を指で掬うと、そっと直してやった。
 半月が照らし出す浜辺の花は今、純白というよりは銀色に妖しく輝いて見えた。

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