喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第4章 ♣永遠の女神♣
「ごめん、ごめん。別に泣かせるつもりじゃなかったんだ。っていうか、それくらいで別に泣かなくても」
必死で眞矢歌の機嫌を取る悠理である。
二人はしばらく並んで歩いた。
いつしか空は菫色に染まり、幾分ふっくらとしてきた月が出ている。満天の星が手を伸ばせば届くほど近くに煌めいていた。
ただ黙って二人並んでいるだけでも、気まずさなど微塵もなく、むしろ心地よい静けさがある。それは二人の間に通じ合うものがあるからだ。理解し合える者同士の空間に生まれる独特の居心地良さが二人を包んでいる。
悠理は誰にも感じたことのないような親密感を眞矢歌と共有しているように思えた。
「眞矢歌さん、子どもが好きなんだね」
唐突に沈黙を破った悠理に、眞矢歌が眼を瞠る。
「ええ。大好きよ」
眞矢歌は頷くと、少し思案げに形の良い眉を寄せた。
「自分が子どもを持てないと知った時、この仕事を選ぼうと思ったの。どうせ我が子を育てることができないのなら、せめてその代わりに他所さまの子どもでも良いから、育ててみたい。その成長を側で見守れるような仕事ができたらって。それで、独学で勉強してこの資格を取ったってわけ。今、担任してるのは年長さんだけど、とにかく皆、やんちゃで可愛くて。うさぎ組二十五人の子どもたち全員が私の子どもだと思ってるの」
自分が子どもを持てないから、せめてその代わりに他人の子どもでも良いから、育ててみたい。
その科白は悠理の心を烈しく揺さぶった。同時に女への愛しさが込み上げ、たとえ何があっても、この女を守ってやりたいという強い想いが湧き上がった。
悠理が黙り込んだのを眞矢歌は誤解したようだ。
「でも、それって、おかしいかしら。ある意味、現実逃避よね」
「そんなことはない」
自分でも予想外に大きな声で出て、悠理は狼狽えた。
必死で眞矢歌の機嫌を取る悠理である。
二人はしばらく並んで歩いた。
いつしか空は菫色に染まり、幾分ふっくらとしてきた月が出ている。満天の星が手を伸ばせば届くほど近くに煌めいていた。
ただ黙って二人並んでいるだけでも、気まずさなど微塵もなく、むしろ心地よい静けさがある。それは二人の間に通じ合うものがあるからだ。理解し合える者同士の空間に生まれる独特の居心地良さが二人を包んでいる。
悠理は誰にも感じたことのないような親密感を眞矢歌と共有しているように思えた。
「眞矢歌さん、子どもが好きなんだね」
唐突に沈黙を破った悠理に、眞矢歌が眼を瞠る。
「ええ。大好きよ」
眞矢歌は頷くと、少し思案げに形の良い眉を寄せた。
「自分が子どもを持てないと知った時、この仕事を選ぼうと思ったの。どうせ我が子を育てることができないのなら、せめてその代わりに他所さまの子どもでも良いから、育ててみたい。その成長を側で見守れるような仕事ができたらって。それで、独学で勉強してこの資格を取ったってわけ。今、担任してるのは年長さんだけど、とにかく皆、やんちゃで可愛くて。うさぎ組二十五人の子どもたち全員が私の子どもだと思ってるの」
自分が子どもを持てないから、せめてその代わりに他人の子どもでも良いから、育ててみたい。
その科白は悠理の心を烈しく揺さぶった。同時に女への愛しさが込み上げ、たとえ何があっても、この女を守ってやりたいという強い想いが湧き上がった。
悠理が黙り込んだのを眞矢歌は誤解したようだ。
「でも、それって、おかしいかしら。ある意味、現実逃避よね」
「そんなことはない」
自分でも予想外に大きな声で出て、悠理は狼狽えた。