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天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~

第9章 祝言

 嘉亨が優しく言い聞かせ、八重の胸許を大きく開く。ひんやりとした夜気に剥きだしになった肩が触れ、八重の白い膚がさっと粟立った。
「あ、私―」
 八重が咄嗟に身を起こそうとする。一度は消えた羞恥がまた、じわじわと湧き上がっていた。
 その華奢な身体を嘉亨の手がそっと褥に押し戻した。
「殿、怖い」
 心細さと羞恥芯に八重が縋るように見上げた。潤んだ黒い瞳は今にも泣き出しそうだ。
 眦まで紅くしていては、かえって嘉亨の感情を煽るばかりだと、八重本人だけが気付かない。
 嘉亨に身を任せることが厭なのではない。ただ初めて異性を受け入れることへの本能的な恐怖が八重を怯えさせていたのだ。
 我慢できないと、嘉亨が八重の帯を解き始めた。やがて、夜陰に白いまろやかな乳房が浮かび上がる。
 露わになった二つの膨らみを、嘉亨はしばらく感嘆するように見つめていた。
 どこからか吹き込んでくる夜風が行灯の焔を揺らす。固く眼を閉じた八重の恥じらいを少しでもやわらげるかのように、嘉亨は枕辺の行灯の灯を落とした。
 仄明かりに滲む八重の白い肢体を改めて愛おしむように眺め、ほのかに色づいた胸の頂にそっと唇を寄せた。
         

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