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天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~

第12章 真実

「だが、私は、そなたに酷いことをしてしまった。今だから正直に申すが、そなたがあの時、あまりに清冶郞の毬を愛おしそうに眺めていたので、つい嫉妬してしまったのだ。そなたは、愚かな男だと笑うだろうな。父が亡くなりし息子に妬むなどと。さりながら、私は時々考えるのだ、八重。もし、清冶郞があと十年年嵩であらば、私は間違いなく、八重を清冶郞に取られたのではないかな。あれは、本当によくできた子であった。病魔に取り憑かれることなどなく、健やかに生い立っていれば、良き藩主となったであろう。―いや、あの子の生命を最後に奪うたのは、病ではなかったな」
 ポツリと零したそのひと言が胸にこたえる。
 清冶郞は、八重と嘉亨が恋仲であったことに衝撃を受け、雨の中に飛び出したのだ。結局は、そのことが清冶郞の生命を奪うことになった。

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