恋愛アノマリーズ×1学期
第2章 入学式前日、先生と
それでも下駄箱がひとつもないことにきょろきょろと辺りを見渡していると、死角になっていた壁の向こう側から白衣姿の男の人が現れた。
「あれ?」
両手で段ボールを抱えているその人は、目を丸くさせてこちらを見つめる。
クルクルと癖の強い、明るい茶髪が特徴的な人だ。
「きみ、もしかして新堂寺小依さん?」
パタパタとスリッパをならせながら駆け寄ってきたその人に、私は手にしていた学生鞄を握りしめて「はい」と頷く。
白衣ということは、理系の先生か保健室の先生なのかもしれない。
しかし、遥さんよりも高い身長の割にその瞳は穏やかで、あまり威圧といったものは感じなかった。
生徒から少なくとも嫌われるタイプではないと思う。