妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
清花が昏々と眠っている間、世話をしたのは威承であった。
「具合はどうだ?」
塒に運び込まれて三日目の夜、光王が様子を見にきた。
「駄目だね。賢(キヨン)法(ボプ)が折角作ってくれた薬湯も全然呑まないんだよ」
ずっと側に付きってきりで看病している威承が難しい顔で首を振る。
その傍らに蹲っていた小柄な老人―賢法がぼそりと呟く。
「心が拒否しておるのじゃ。この娘は何か大きな闇を心に抱えておる。だから、生きたくないと心が叫び、目ざめぬばかりか、薬湯まで拒否しておる」
賢法は医者くずれの老人である。昔は結構名の知れた医者だったこともあるらしいが、偽薬を明渡りの妙薬と偽り大儲けをしようなどと大それたことを企み、危うく役人に捕まえられそうになった。
逃げ出したところを光王に助けられ、今に至っている。賢法の代わりに、裏の世界に顔が利く光王が大金を払って口封じをしてやったのだ。
威承が二人のやり取りを聞きながら、匙で掬った薬湯を清花の口許に運ぶ。しかし、折角の薬湯も一切受けつけられず、流れ落ちてしまうだけだ。
威承が溜息をつき、手ぬぐいで清花の口許を拭いた。
賢法が真っ白な眉を顰め、〝いかんな〟と首を振る。
そのときだった。その場にいた光王がすかさず薬湯の入った碗を威承から奪い取った。自分が口に含んだかと思うと、いきなり眠っている清花の唇を塞ぎ、薬湯を口移しで呑ませたのだ。
「具合はどうだ?」
塒に運び込まれて三日目の夜、光王が様子を見にきた。
「駄目だね。賢(キヨン)法(ボプ)が折角作ってくれた薬湯も全然呑まないんだよ」
ずっと側に付きってきりで看病している威承が難しい顔で首を振る。
その傍らに蹲っていた小柄な老人―賢法がぼそりと呟く。
「心が拒否しておるのじゃ。この娘は何か大きな闇を心に抱えておる。だから、生きたくないと心が叫び、目ざめぬばかりか、薬湯まで拒否しておる」
賢法は医者くずれの老人である。昔は結構名の知れた医者だったこともあるらしいが、偽薬を明渡りの妙薬と偽り大儲けをしようなどと大それたことを企み、危うく役人に捕まえられそうになった。
逃げ出したところを光王に助けられ、今に至っている。賢法の代わりに、裏の世界に顔が利く光王が大金を払って口封じをしてやったのだ。
威承が二人のやり取りを聞きながら、匙で掬った薬湯を清花の口許に運ぶ。しかし、折角の薬湯も一切受けつけられず、流れ落ちてしまうだけだ。
威承が溜息をつき、手ぬぐいで清花の口許を拭いた。
賢法が真っ白な眉を顰め、〝いかんな〟と首を振る。
そのときだった。その場にいた光王がすかさず薬湯の入った碗を威承から奪い取った。自分が口に含んだかと思うと、いきなり眠っている清花の唇を塞ぎ、薬湯を口移しで呑ませたのだ。