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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第4章 第二部・生

 流石に威承も賢法も言葉がなく、ただ眼の前の光景を唖然として見つめていた。が、光王の機転のお陰で、清花は無事、薬湯を呑んだ。それ以降、彼女は依然として意識が戻らないままにも、薬湯だけは素直に受けつけるようになった。
 威承の手厚い看護のお陰で、清花は四日目の朝、意識を回復した。
「気が付いたか?」
 清花がめざめて最初に見たのが、光王だった。男にしては整いすぎるほど整った美しい容貌は、彼が空恐ろしいほどの美男であることを示す。艶(つや)のある美貌というのか、とにかく現実離れした美しさを持つ男だった。
 たとえ心はどれほどの深い傷を負っていようと、十七歳の若い肉体の回復は早かった。
 清花は光王の庇護の下で、ひと月も経たない中にすっかり健康を取り戻した。
 最初の頃、清花はよく思ったものだ。
 天人が人の形を取ったら、恐らくは光王のような美男になるに違いない、と。
 その美貌は、彼に人をよせつけない冷たさを持つ印象を与えているが、外見と内面のこれほど違う人もまた滅多といないだろう。
 素顔の光王は、ざっくばらんで実に気さくな男である。
 〝光の王〟は総勢でいえば、十数人はいるが、それだけの頭数が一同に会することはまずない。暗殺者集団だともいえるし、また、都人からは〝義賊〟と呼ばれている。
 光王は、誰からの命令もけして受けない。常に己れの信念にのみ従う。ゆえに、たとえ、両班からの依頼であろうと、どれほど金を積まれようと、殺しを引き受けるといったことはないのである。
 彼が動くのは、彼自身が抹殺したいと思った相手がいたときのみだ。

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