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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第4章 第二部・生

 この時、清花は光王の双眸が随分と色素が薄いことに気付いた。茶色がかった瞳の色は、彼のさらさらとした長い髪と同じ色だ。
 彼はいつも肩下まで伸びた髪を結い上げず、後ろで一つに括っている。だらしないといえばだらしないのだが、これがまた光王の常人離れした美貌によく似合っているのだ。
 まるで少しの嘘さえ許さないとでも言っているかのような彼の鋭い視線に、清花は眼を伏せた。
 氷を含んだような静寂が二人の間に落ちた。
 結局、清花は何も応えられなかった。
 光王は辛抱強く彼女の応えを待っていたが、やがて、ポツリと呟くように言った。
「生きろ。憎しみの焔を燃やしていても良いから、とにかく生きろ。生きることを諦めるな」
 何故、彼が自分の心をこうまで見事に言い当てたのかは判らなかった。清花は、医者くずれの老人が光王に〝この娘は生きることを拒否している〟―、そう告げたことを知らない。
 だが、清花自身は全く気付いていなかったが、必要以上に明るくふるまおうとする清花の態度は、光王だけでなく守尹や威承の眼にも健気というよりは痛々しく映っていたのである。時折、彼女の横顔に落ちる翳は、彼女が体験した苛酷な過去を何より物語っていた。
 宮殿の門の前に血まみれで気を失っていたことから考えても―しかも、そのときの清花の格好は見るも無惨で、明らかに陵辱された痕跡が身体に残っていた。

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