妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
清花は長い回想から自分を解き放った。
この三年は長いようでもあり、短いようでもあった。
清花は床の上で身じろぎもせず、薄い闇を睨み続ける。
傍らで眠る威承が寝返りを打ち、寝ぼけ眼(まなこ)で呟いた。
「なに、どうしたの? また、あの夢?」
いつも枕を並べて眠る彼女は、清花が時折、悪夢にうなされるのを誰よりよく知っている。
「あんたに何があったのか、あたしは知らない。多分、どんなことを言っても、安易な慰めにしかならないだろう。でも、これだけは言える。とにかく今は眠りなよ。眠れなくても眠るんだ。今の清花に必要なのは、何も余計なことは考えないで眠ることだからね」
確かに威承の言うとおりだった。復讐に必要なのは何よりも体力だ。威承が光王から復讐云々の話を聞いているとは思えないけれど、狭い家の中にいれば自ずと察せられるものがある。何より、威承もまた清花を見つけたときの酷い状態を知っているのだ。
「ありがと、威承」
あれこれとおざなりな慰めや励ましを言われるよりも、威承のひと言は心に温かく滲みた。
礼を言ってみても、返事がない。
布団に潜り込んで背を向けている威承の顔を覗き込むと、彼女は既に小さな鼾をかいて眠り込んでいた。
この三年は長いようでもあり、短いようでもあった。
清花は床の上で身じろぎもせず、薄い闇を睨み続ける。
傍らで眠る威承が寝返りを打ち、寝ぼけ眼(まなこ)で呟いた。
「なに、どうしたの? また、あの夢?」
いつも枕を並べて眠る彼女は、清花が時折、悪夢にうなされるのを誰よりよく知っている。
「あんたに何があったのか、あたしは知らない。多分、どんなことを言っても、安易な慰めにしかならないだろう。でも、これだけは言える。とにかく今は眠りなよ。眠れなくても眠るんだ。今の清花に必要なのは、何も余計なことは考えないで眠ることだからね」
確かに威承の言うとおりだった。復讐に必要なのは何よりも体力だ。威承が光王から復讐云々の話を聞いているとは思えないけれど、狭い家の中にいれば自ずと察せられるものがある。何より、威承もまた清花を見つけたときの酷い状態を知っているのだ。
「ありがと、威承」
あれこれとおざなりな慰めや励ましを言われるよりも、威承のひと言は心に温かく滲みた。
礼を言ってみても、返事がない。
布団に潜り込んで背を向けている威承の顔を覗き込むと、彼女は既に小さな鼾をかいて眠り込んでいた。