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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第4章 第二部・生

「獲物を捕らえ、狩りをする時、虎は脚音を忍ばせるという。むろん、それは相手に気配と殺気を気取られないためだ。剣の方は刻が解決してくれるだろう。今ほどの練習を重ねれば、お前の剣は十分使いものになる。剣の腕を磨くことも大切だが、お前にはまず忍耐を身につけることが必要だ。くれぐれも焦るな、余計な雑念は失敗を招く。失敗は即ち死を意味する」
「死なんか怖れはしない」
 清花は低い声で言う。
 その返答に、光王が眉をつり上げた。
「お前はそれで良いだろう。だが、お前を守って無念の死を遂げた恋しい男の死を犬死ににする気か?」
 そのひと言に、烈しく心を抉られた。
 あの男の死を犬死に―、無駄死ににするですって? 冗談ではないと思った。

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