妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
―俺も母親と同じさ。
彼の父は両班―中級官吏であった。その男は母には本気だと甘い科白を囁いておきながら、いざ子どもができると、あっさりと母を棄て、上司の娘と結婚した。〝本当に俺の子なのか〟とまで母に怒鳴った。〝身持ちの悪い妓生の孕んだ子など、どこの男の胤か知れたものではない〟―、そうまで言ったそうだ。
―俺は物心ついたときから、妓生の子だと蔑まれて育った。
さんざん苦労して彼を育てた母に何とか報いたいと思っていたが、その母ももういない。
彼は、彼らしくない気弱な笑みで話を締めくくった。
その時、清花は、光王の髪や眼の色が何故、皆と少しだけ違うのかを理解した。彼には外国人であった祖母の血が混ざっているのだ。だから、全体的に色素が薄いのだろうし、常人離れした美貌も混血だということもあるのかもしれない。
痛みを知るからこそ、彼は誰よりも強く、そして優しい。
清花は差しのべられた手に掴まり、立ち上がった。
「お前は俺が思った以上に、よくやっている」
光王の大きな手が清花の頭を撫でる。まるで兄が幼い妹に対するような仕種だ。
考えてみれば、彼に賞められたのは、これが初めてだ。
これまで清花には焦りがあった。剣がなかなか思うように上達せず、苛立ちを募らせていたのである。
だが、光王のこのひと言が彼女の心を慰めた。
光王は用事があると先に塒に帰っていった。
清花はいつもここで剣の稽古をした後は、本堂で御仏に祈りを捧げるのが日課になっている。
彼の父は両班―中級官吏であった。その男は母には本気だと甘い科白を囁いておきながら、いざ子どもができると、あっさりと母を棄て、上司の娘と結婚した。〝本当に俺の子なのか〟とまで母に怒鳴った。〝身持ちの悪い妓生の孕んだ子など、どこの男の胤か知れたものではない〟―、そうまで言ったそうだ。
―俺は物心ついたときから、妓生の子だと蔑まれて育った。
さんざん苦労して彼を育てた母に何とか報いたいと思っていたが、その母ももういない。
彼は、彼らしくない気弱な笑みで話を締めくくった。
その時、清花は、光王の髪や眼の色が何故、皆と少しだけ違うのかを理解した。彼には外国人であった祖母の血が混ざっているのだ。だから、全体的に色素が薄いのだろうし、常人離れした美貌も混血だということもあるのかもしれない。
痛みを知るからこそ、彼は誰よりも強く、そして優しい。
清花は差しのべられた手に掴まり、立ち上がった。
「お前は俺が思った以上に、よくやっている」
光王の大きな手が清花の頭を撫でる。まるで兄が幼い妹に対するような仕種だ。
考えてみれば、彼に賞められたのは、これが初めてだ。
これまで清花には焦りがあった。剣がなかなか思うように上達せず、苛立ちを募らせていたのである。
だが、光王のこのひと言が彼女の心を慰めた。
光王は用事があると先に塒に帰っていった。
清花はいつもここで剣の稽古をした後は、本堂で御仏に祈りを捧げるのが日課になっている。