妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第1章 闇
とにかく王の女好きは幼少で即位した直後から、始まっていたのである。
ある日、王は意中の女官の許に忍んでいった帰りであった。その娘はまだ女官見習いで、入宮して日も浅かった。家が貧しく、やむなく女官として上がったものの、ひそかに想い合った恋人がいたという。そのため、王が幾らかき口説いても靡かなかったのを、王は何とかして我が物にしようと躍起になっていた。
丁度、その娘は仕事の合間で自室にいた。疲れて微睡んでいるところ、王に寝込みを襲われた形になった。半ば手籠めにされたのである。その帰り道、王は女官の住まう殿舎を出たところで、引きつけの発作に見舞われた。幾ら我が儘で女好きの王とはいえ、我が身のの行為が外聞をはばかるものだということくらいは判っている。ゆえに、いつもは引き連れている内官や尚宮たち伴回りの者を連れていなかった。
たった一人でその場に倒れていた王をたまたま見つけたのが、朴内官だったというわけである。朴内官はすぐに王を背負い、尚(サン)薬(ヤク)(内官、医者に相当する)の許に連れていった。王の住まう大殿(テージヨン)まで戻るのももどかしく、王が倒れていた場所から尚薬の許までの方が近かったため、そちらに連れていったのだ。
その機転のお陰で、王は事無きを得た。発作を起こしてから刻を経ていたため、手当が遅れれば遅れるほど、後遺症が残る可能性が高かったのだ。しかし、幸いにも、目立った後遺症はなく済んだ。
その日の夕刻、手籠めにされた十五歳の女官は自室で首を吊って死んだ。すべては内密に処理され、王のこの非道な行いは闇から闇へと葬られ、女官が自殺した事件は病死として処理された。
ある日、王は意中の女官の許に忍んでいった帰りであった。その娘はまだ女官見習いで、入宮して日も浅かった。家が貧しく、やむなく女官として上がったものの、ひそかに想い合った恋人がいたという。そのため、王が幾らかき口説いても靡かなかったのを、王は何とかして我が物にしようと躍起になっていた。
丁度、その娘は仕事の合間で自室にいた。疲れて微睡んでいるところ、王に寝込みを襲われた形になった。半ば手籠めにされたのである。その帰り道、王は女官の住まう殿舎を出たところで、引きつけの発作に見舞われた。幾ら我が儘で女好きの王とはいえ、我が身のの行為が外聞をはばかるものだということくらいは判っている。ゆえに、いつもは引き連れている内官や尚宮たち伴回りの者を連れていなかった。
たった一人でその場に倒れていた王をたまたま見つけたのが、朴内官だったというわけである。朴内官はすぐに王を背負い、尚(サン)薬(ヤク)(内官、医者に相当する)の許に連れていった。王の住まう大殿(テージヨン)まで戻るのももどかしく、王が倒れていた場所から尚薬の許までの方が近かったため、そちらに連れていったのだ。
その機転のお陰で、王は事無きを得た。発作を起こしてから刻を経ていたため、手当が遅れれば遅れるほど、後遺症が残る可能性が高かったのだ。しかし、幸いにも、目立った後遺症はなく済んだ。
その日の夕刻、手籠めにされた十五歳の女官は自室で首を吊って死んだ。すべては内密に処理され、王のこの非道な行いは闇から闇へと葬られ、女官が自殺した事件は病死として処理された。