妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第1章 闇
この一件以来、王は朴内官を誰よりも信頼するようになった。発作を起こした王を担いで尚薬の許に運んだ後、朴内官は内侍府長に直ちに箝口令を敷くように進言したからだ。これにより、王の愚行を知る者はごく内輪の者たち―内侍府の者たちだけに限られることになった。
この後、朴内官は大殿付き、つまり国王付き内官に抜擢され、三年間勤めた後、更にその能力を評価されて監察部に配属替えとなった。監察部長になる日も近い―と専らの噂である。
内侍府きっての切れ者、大臣たちでさえ手を焼くという扱いの難しい王の信頼も厚く、その上、驕ったところはない。上背があり整った面立ちで、しかも誰にでも優しく物腰もやわらかとくれば、女官たちに人気のないはずがない。若い女官たちから恋文を手渡されたり、ひそかに差し入れを受けたりすることは日常茶飯事なほどモテるのだという。
その日、清花はいつものように大量の洗濯物をこなしていた。暦は既に五月に入っており、日中は少し動いただけで汗ばむほどの陽気だ。この暑さでは初夏というよりは夏といった方が良いかもしれない。
今日は、別に春枝がサボったわけではない。春枝は張尚宮のお伴をして大王(テーワン)大妃(テービ)の許に赴いていた。大王大妃というのは、先々代の王妃だった人である。権門の出であり、現国王の実の祖母に当たる女性でもあるが、万事に控えめで、けして出しゃばることがない。陽徳山君が十二歳で即位してから数年は垂簾の政(まつりごと)(王が幼少の時、大妃(テービ)や大王大妃が後見として代わりに政務を執ること)を取っていたが、現在はひっそりと隠居生活を送っている。
棍棒で洗濯物を叩いて汚れを落とすわけだが、これがなかなか骨の折れる作業だ。しかし、清花は洗濯が嫌いではなかった。真っ白に洗い上がったものを見るのは気持ちの良いものだ。殊に今日のようなよく晴れた五月の蒼空を背景に洗濯物が翻る光景は、爽快である。
この後、朴内官は大殿付き、つまり国王付き内官に抜擢され、三年間勤めた後、更にその能力を評価されて監察部に配属替えとなった。監察部長になる日も近い―と専らの噂である。
内侍府きっての切れ者、大臣たちでさえ手を焼くという扱いの難しい王の信頼も厚く、その上、驕ったところはない。上背があり整った面立ちで、しかも誰にでも優しく物腰もやわらかとくれば、女官たちに人気のないはずがない。若い女官たちから恋文を手渡されたり、ひそかに差し入れを受けたりすることは日常茶飯事なほどモテるのだという。
その日、清花はいつものように大量の洗濯物をこなしていた。暦は既に五月に入っており、日中は少し動いただけで汗ばむほどの陽気だ。この暑さでは初夏というよりは夏といった方が良いかもしれない。
今日は、別に春枝がサボったわけではない。春枝は張尚宮のお伴をして大王(テーワン)大妃(テービ)の許に赴いていた。大王大妃というのは、先々代の王妃だった人である。権門の出であり、現国王の実の祖母に当たる女性でもあるが、万事に控えめで、けして出しゃばることがない。陽徳山君が十二歳で即位してから数年は垂簾の政(まつりごと)(王が幼少の時、大妃(テービ)や大王大妃が後見として代わりに政務を執ること)を取っていたが、現在はひっそりと隠居生活を送っている。
棍棒で洗濯物を叩いて汚れを落とすわけだが、これがなかなか骨の折れる作業だ。しかし、清花は洗濯が嫌いではなかった。真っ白に洗い上がったものを見るのは気持ちの良いものだ。殊に今日のようなよく晴れた五月の蒼空を背景に洗濯物が翻る光景は、爽快である。