妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
料理は外で火を熾し、獲った獣の肉を焼いたり焙ったりして済ませた。米も同じようにして外で炊くのだ。
小屋に戻った光王は清花を馬から抱き下ろすと、抱いたまま小屋の戸を開けた。
「光王、降ろして。私、ちゃんと歩けるから」
清花が身を捩り、抗議の声を上げても、光王は眉ひとつ動かさない。
今朝は二人とも朝寝してしまったので、布団はそのままにしてある。光王は抱きかかえた清花を敷きっ放しの夜具の上に降ろした。
「光―王」
のしかかってきた光王は怖ろしいほどの威圧感がある。
清花の脳裡に三年前の記憶が甦った。
国王の寝所で王に陵辱されかけたときのことだ。
淫蕩な眼で清花の身体中を眺め回してきた王、自分でさえ触れたことのない場所を暴き立て、指や舌で好き放題にかき回され、蹂躙されたあの夜。
思い出すだけで、気分が悪くなって吐きそうになる。それだけではない、途方もない恐怖が清花を襲った。
「光王、何をするつもりなの?」
声が震えてしまうのは、この際、致し方ないことだったろう。
「女であることを武器にする―、俺が直接教えてやると言っただろう」
光王の声は怖ろしいほど甘く、艶めかしかった。彼をよく知らない人が聞けば、優しい声だと思うだろう、そんな声だ。
だが、清花は知っている。
光王がこんな表情をするときは、たとえ言葉だけは優しげでも、彼の声も瞳も冷え切っていることを。
この顔は、先刻、見たばかりだ。次々と何かに駆り立てられるように獣に矢を射かけていたときの彼は、こんな風にすべての感情を殺してしまったような顔をしていた。
小屋に戻った光王は清花を馬から抱き下ろすと、抱いたまま小屋の戸を開けた。
「光王、降ろして。私、ちゃんと歩けるから」
清花が身を捩り、抗議の声を上げても、光王は眉ひとつ動かさない。
今朝は二人とも朝寝してしまったので、布団はそのままにしてある。光王は抱きかかえた清花を敷きっ放しの夜具の上に降ろした。
「光―王」
のしかかってきた光王は怖ろしいほどの威圧感がある。
清花の脳裡に三年前の記憶が甦った。
国王の寝所で王に陵辱されかけたときのことだ。
淫蕩な眼で清花の身体中を眺め回してきた王、自分でさえ触れたことのない場所を暴き立て、指や舌で好き放題にかき回され、蹂躙されたあの夜。
思い出すだけで、気分が悪くなって吐きそうになる。それだけではない、途方もない恐怖が清花を襲った。
「光王、何をするつもりなの?」
声が震えてしまうのは、この際、致し方ないことだったろう。
「女であることを武器にする―、俺が直接教えてやると言っただろう」
光王の声は怖ろしいほど甘く、艶めかしかった。彼をよく知らない人が聞けば、優しい声だと思うだろう、そんな声だ。
だが、清花は知っている。
光王がこんな表情をするときは、たとえ言葉だけは優しげでも、彼の声も瞳も冷え切っていることを。
この顔は、先刻、見たばかりだ。次々と何かに駆り立てられるように獣に矢を射かけていたときの彼は、こんな風にすべての感情を殺してしまったような顔をしていた。