妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
結局、二人は昼過ぎまで愛し合い、山を降りたのは夕刻近くになってからだった。
いつもなら二日で帰ってくる二人が六日間も戻ってこなかったという事実に、守尹も威承もおおよそのことは察しているようだった。
威承が清花に近寄ってきたかと思うと、耳許で囁いたのだ。
「清花、私は、あんたが光王とくっついてくれて、嬉しいんだよ。そりゃア、私は光王のこと好きだったけど、あたしなんかじゃ所詮、あのひとの相手にはならないから。あんたが光王の女房になるのなら、大歓迎だ。ね、形だけでも良いから、結婚式をやろうよ、〝光の王〟の仲間たちもここに呼んでさ」
威承の気持ちは嬉しかったが、その期待には添えそうにはなかった。その時、清花の心には既にある決意が定まっていたのである。
塒に六日ぶりに帰ってきたその翌日、清花は光王にここを出てゆくつもりだと告げた。
「本当に行くのか?」
光王は引き止める言葉を口にはしたけれど、清花が出てゆくと言い出すのではないかと予め予感していたようだ。
それでもなお、彼は止めた。
「行くな。ずっとここに、俺の側にいろ」
「おかしいわ、あなたがそんなことを言うなんて」
清花は淡く微笑した。
「あなたには色んなことを教えて貰ったわ、光王。あなたがいなければ、私は今日、生きてはいなかった。一度は死んだ私に、あなたが新しい生命を吹き込んでくれたの」
「まるで別れの科白だな」
光王が清花に向ける眼を細める。
「だって、本当にお別れだもの」
光王が口を開きかける。短い沈黙が彼の逡巡を示しているようだった。
いつもなら二日で帰ってくる二人が六日間も戻ってこなかったという事実に、守尹も威承もおおよそのことは察しているようだった。
威承が清花に近寄ってきたかと思うと、耳許で囁いたのだ。
「清花、私は、あんたが光王とくっついてくれて、嬉しいんだよ。そりゃア、私は光王のこと好きだったけど、あたしなんかじゃ所詮、あのひとの相手にはならないから。あんたが光王の女房になるのなら、大歓迎だ。ね、形だけでも良いから、結婚式をやろうよ、〝光の王〟の仲間たちもここに呼んでさ」
威承の気持ちは嬉しかったが、その期待には添えそうにはなかった。その時、清花の心には既にある決意が定まっていたのである。
塒に六日ぶりに帰ってきたその翌日、清花は光王にここを出てゆくつもりだと告げた。
「本当に行くのか?」
光王は引き止める言葉を口にはしたけれど、清花が出てゆくと言い出すのではないかと予め予感していたようだ。
それでもなお、彼は止めた。
「行くな。ずっとここに、俺の側にいろ」
「おかしいわ、あなたがそんなことを言うなんて」
清花は淡く微笑した。
「あなたには色んなことを教えて貰ったわ、光王。あなたがいなければ、私は今日、生きてはいなかった。一度は死んだ私に、あなたが新しい生命を吹き込んでくれたの」
「まるで別れの科白だな」
光王が清花に向ける眼を細める。
「だって、本当にお別れだもの」
光王が口を開きかける。短い沈黙が彼の逡巡を示しているようだった。