妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
「どうやら、お前に心底惚れちまったようだ」
「私もあなたが好きよ、光王。強くて優しくて涙脆いあなたが大好き」
「何で、俺が涙脆いんだ」
少し怒ったような口調は、まるで少年のようだ。光王の歳は聞いたことはないが、恐らく考えているよりは若い―、清花と変わらないのではないか。
だって、あなた、泣いてるじゃない。と、清花は光王の男にしては白い頬を人さし指で撫でた。
「でも、私には、やらなければならないことがあるし、そのためにここを出ていかなければならない。私は、あなたの手で生まれ変わって刺客として、ここを出てゆくの」
「俺が―お前を刺客に仕立て上げたのか」
光王は歌うように言い、そうか、そうだよなと、小さく笑う。その表情はひどく辛そうだった。
「本当に何もかもありがとう、光王。あなたのことは一生、忘れない」
清花はそっと光王に顔を近付ける。
その花のような唇がほんのかすかに光王の頬に触れた。
「俺もお前を一生忘れないだろう」
清花は婉然と微笑んだ。その面には、もう三年前、光王が眼にした、まだあどけなさを残した十七歳の少女の面影はなかった。
清花は変わった。三年という月日は、彼女にとって、けして短くはなかったのだ。光王の許で清花は花開き、そして大人の女に成長した。
「じゃあ、行くわ。守尹と威承には何も言わずに出ていきたいの。逢えば、きっと余計に辛くなるから」
清花が微笑んで言うと、光王は頷いた。
「私もあなたが好きよ、光王。強くて優しくて涙脆いあなたが大好き」
「何で、俺が涙脆いんだ」
少し怒ったような口調は、まるで少年のようだ。光王の歳は聞いたことはないが、恐らく考えているよりは若い―、清花と変わらないのではないか。
だって、あなた、泣いてるじゃない。と、清花は光王の男にしては白い頬を人さし指で撫でた。
「でも、私には、やらなければならないことがあるし、そのためにここを出ていかなければならない。私は、あなたの手で生まれ変わって刺客として、ここを出てゆくの」
「俺が―お前を刺客に仕立て上げたのか」
光王は歌うように言い、そうか、そうだよなと、小さく笑う。その表情はひどく辛そうだった。
「本当に何もかもありがとう、光王。あなたのことは一生、忘れない」
清花はそっと光王に顔を近付ける。
その花のような唇がほんのかすかに光王の頬に触れた。
「俺もお前を一生忘れないだろう」
清花は婉然と微笑んだ。その面には、もう三年前、光王が眼にした、まだあどけなさを残した十七歳の少女の面影はなかった。
清花は変わった。三年という月日は、彼女にとって、けして短くはなかったのだ。光王の許で清花は花開き、そして大人の女に成長した。
「じゃあ、行くわ。守尹と威承には何も言わずに出ていきたいの。逢えば、きっと余計に辛くなるから」
清花が微笑んで言うと、光王は頷いた。