妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
「そうか」
「あなたって、いつも、そうかって、そればかりね」
人を殺したいのだ、手を貸して欲しいと告げたときも、彼は〝そうか〟と呆気ないほどの返事を返してきた。
短いようで長く、長いようで短い三年だった。今、清花は光王と共に過ごした月日を万感の想いを込めて振り返っていた。
「一世一代の恋の告白をしたのに、フラレたんだぞ。いつもどおりにぺらぺらと喋れるわけないだろうが。これでも傷ついてるんだからな」
わざとふて腐れたように言う光王を見て、清花は明るい笑い声を上げた。彼らしくない空元気は彼なりの気遣いだと判るから、自分もまた〝そうね〟と言うだけにしておこうと思う。
「ありがとう、光王。私、あなたのこと、忘れない」
清花はもう一度微笑むと、今度こそ戸を開けて、出ていった。
おかしいぞ、今日の俺は。女が出ていったくらいで、何でこんなに涙が出るんだ? みっともないったら、ありゃしない。
光王は頬をつたう涙を手のひらでこすった。
涙を流したのなんて、何十年ぶりだろう。確か、母を亡くしたとき以来だ。
母を喪って以来、彼は心を無にして生きてきた。もう二度と、誰かを失って哀しむことはご免だと頑なに心を閉ざしてきたような気がする。
だが、あの娘はいともあっさりと彼の凍った心を溶かしたのだ。あの春風のような優しい笑顔で。
後にも先にも〝盗賊光王〟の心を捉えた女は、清花一人だろう。
「あなたって、いつも、そうかって、そればかりね」
人を殺したいのだ、手を貸して欲しいと告げたときも、彼は〝そうか〟と呆気ないほどの返事を返してきた。
短いようで長く、長いようで短い三年だった。今、清花は光王と共に過ごした月日を万感の想いを込めて振り返っていた。
「一世一代の恋の告白をしたのに、フラレたんだぞ。いつもどおりにぺらぺらと喋れるわけないだろうが。これでも傷ついてるんだからな」
わざとふて腐れたように言う光王を見て、清花は明るい笑い声を上げた。彼らしくない空元気は彼なりの気遣いだと判るから、自分もまた〝そうね〟と言うだけにしておこうと思う。
「ありがとう、光王。私、あなたのこと、忘れない」
清花はもう一度微笑むと、今度こそ戸を開けて、出ていった。
おかしいぞ、今日の俺は。女が出ていったくらいで、何でこんなに涙が出るんだ? みっともないったら、ありゃしない。
光王は頬をつたう涙を手のひらでこすった。
涙を流したのなんて、何十年ぶりだろう。確か、母を亡くしたとき以来だ。
母を喪って以来、彼は心を無にして生きてきた。もう二度と、誰かを失って哀しむことはご免だと頑なに心を閉ざしてきたような気がする。
だが、あの娘はいともあっさりと彼の凍った心を溶かしたのだ。あの春風のような優しい笑顔で。
後にも先にも〝盗賊光王〟の心を捉えた女は、清花一人だろう。