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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第5章 讐

 宮殿には秘密の抜け道がある。これは代々の王から王へと口伝で伝えられ、更に王に最も近く忠誠を誓うとされている内侍府長だけが知る最高機密でもあった。むろん、有事の際、国王がこの通路を使って安全に宮殿の外に避難できるためのもので、非常時にしか使用されない。
 ところが、陽徳山君はこの通路を通って、お忍びで出かけるのだ。そのお伴を仰せつかるのは、もちろん、趙内官である。
 〝今日もゆくぞ〟というのは、二人の間の合い言葉である。
 これからほどなく、大殿から国王とお付きの内官の姿が忽然と消えた―。
  

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