妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第2章 恋
「先日、大王大妃さまが干し棗をご所望とお聞きし、この者に生菓房までゆかせました。大王大妃さまの御前にお出しするデザートには、是非、干し棗をお出しするように伝えよと申しつけたのでございます。そうしたところ、清花は、ただ干し棗をそのままお出しするより、暑い夏のことゆえ、冷たい寒天寄せなどにした方が更に食がお進みになるのではないかと気を利かせ、自ら生菓房でこれを作ってみたのです」
「何とも気の利く娘であることよ。張尚宮、そなたは良き人材に恵まれたようだ。なかなか先が楽しみな女官ではないか」
金氏が傍らの大王大妃付き尚宮に眼顔で合図すると、尚宮が寒天寄せの小鉢を取り上げ、手渡した。金氏は木の匙でぷるんとしたゼリーをひと口掬い、口に含んだ。
「何とも美味だ」
金氏は微笑むと、皆の前で瞬く間にそれを平らげた。
「口の中でするりととろけるようで、のどごしも良い。甘過ぎもせず、さりとて、無味乾燥というのでもない。ほどよい甘さと口当たりの良い食感が堪らぬ。まるで玄人はだしの腕ではないか。具清花とやら、そなたは生果房勤めになった方がその才を存分に発揮できるのではないか?」
勤める部署を替えた方が良いというのは冗談半分にしても、尚宮たちもいるこの場でここまで手放しに賞められ、清花はいたたまれない。
「ありがたきお言葉、畏れ多いことにございます」
「蒸し饅頭の方は後ほどゆるりと頂くとしよう」
金氏は手前にある文机の引き出しを開き、やおら何かを取り出した。
小さな錦の巾着を文机に乗せる。薄桃色の巾着を彼女は取り上げ、清花に向かって差し出した。
「何とも気の利く娘であることよ。張尚宮、そなたは良き人材に恵まれたようだ。なかなか先が楽しみな女官ではないか」
金氏が傍らの大王大妃付き尚宮に眼顔で合図すると、尚宮が寒天寄せの小鉢を取り上げ、手渡した。金氏は木の匙でぷるんとしたゼリーをひと口掬い、口に含んだ。
「何とも美味だ」
金氏は微笑むと、皆の前で瞬く間にそれを平らげた。
「口の中でするりととろけるようで、のどごしも良い。甘過ぎもせず、さりとて、無味乾燥というのでもない。ほどよい甘さと口当たりの良い食感が堪らぬ。まるで玄人はだしの腕ではないか。具清花とやら、そなたは生果房勤めになった方がその才を存分に発揮できるのではないか?」
勤める部署を替えた方が良いというのは冗談半分にしても、尚宮たちもいるこの場でここまで手放しに賞められ、清花はいたたまれない。
「ありがたきお言葉、畏れ多いことにございます」
「蒸し饅頭の方は後ほどゆるりと頂くとしよう」
金氏は手前にある文机の引き出しを開き、やおら何かを取り出した。
小さな錦の巾着を文机に乗せる。薄桃色の巾着を彼女は取り上げ、清花に向かって差し出した。