妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第2章 恋
―良いんだよ、たとえ、その日が来なかったとしても、私はお前のために婚礼衣装が仕立ててやりたかったのさ。これを仕立てながら、綺麗なべべを着たお前がどれほど美しかろうと想像するのが愉しかったんだよ。私が好きでしたことなんだから、もう何も言わないでおくれ。
母はそれ以上、泣き顔を見られたくないとでもいうかのように、清花に背を向けてしまった―。
人知れず咲いて散る花、女官は哀しい宿命を背負っている。誰に愛でられることなく、ひっそりと花開き、人知れず散ってゆく。
女官になると決心した時、清花はまだ九歳だった。男性を愛するとか、誰かに嫁ぐということを具体的に理解していたわけでもなく、遠い世界の出来事のようにしか思えなかった。それほど幼かったのだ。
しかし、刻が経ち、十七歳となった今、その頃とは自ずと考えは違う。自分の歳では嫁いで人妻となっている者は多く、早ければ母となっている者もいるだろう。まさに結婚適齢期なのだ。
長じて女官の宿命をきちんと理解できるようになっても、清花は自分の選択を悔いたことは一度たりともない。たとえ嫁ぐのは叶わずとも、女官の仕事は自分の能力を活かせるやり甲斐のある仕事だ。
今日、意外だったのは、張尚宮が自分の努力をきちんと認め、それなりの評価をしていてくれたことだった。いつもは失敗ばかりして、お説教されることの多い清花ではあるが、大王大妃の前で張尚宮がまるで我が娘のなしたことのように清花が干し棗のデザートを作ったことを得々と披露していた。
また、大王大妃も張尚宮が清花を信頼しているのをいち早く見抜いたようであった。
母はそれ以上、泣き顔を見られたくないとでもいうかのように、清花に背を向けてしまった―。
人知れず咲いて散る花、女官は哀しい宿命を背負っている。誰に愛でられることなく、ひっそりと花開き、人知れず散ってゆく。
女官になると決心した時、清花はまだ九歳だった。男性を愛するとか、誰かに嫁ぐということを具体的に理解していたわけでもなく、遠い世界の出来事のようにしか思えなかった。それほど幼かったのだ。
しかし、刻が経ち、十七歳となった今、その頃とは自ずと考えは違う。自分の歳では嫁いで人妻となっている者は多く、早ければ母となっている者もいるだろう。まさに結婚適齢期なのだ。
長じて女官の宿命をきちんと理解できるようになっても、清花は自分の選択を悔いたことは一度たりともない。たとえ嫁ぐのは叶わずとも、女官の仕事は自分の能力を活かせるやり甲斐のある仕事だ。
今日、意外だったのは、張尚宮が自分の努力をきちんと認め、それなりの評価をしていてくれたことだった。いつもは失敗ばかりして、お説教されることの多い清花ではあるが、大王大妃の前で張尚宮がまるで我が娘のなしたことのように清花が干し棗のデザートを作ったことを得々と披露していた。
また、大王大妃も張尚宮が清花を信頼しているのをいち早く見抜いたようであった。