妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第2章 恋
「それは予の申し出を拒むということか?」
コクリと小さく頷いた清花を射貫くように見据える王の双眸がカッと光る。
「―許さぬ」
王が呟き、清花はヌッと突き出た逞しい手に腕をいきなり掴まれた。
「後宮の女官はすべて国王のものだと決まっている。そなたの良人は王たる予以外にはおらぬ。それを、我が意を拒むとは何という身の程知らずな女か!」
腕を掴まれた清花は懸命に抗った。
「殿下、どうかお放し下さいませ。殿下、お願いでございます」
しかし、屈強な体軀の王と小柄な清花では所詮、大人と赤児ほどの力の差がある。
それでも暴れる清花に業を煮やしたのか、王がいきなり清花を強い力で後方へ突き飛ばした。石畳に背中と腰を強く打ちつけ、鋭い衝撃と痛みが走る。仰向けに倒れた清花の上から、すかさず王が覆い被さってきた。
「おのれ、女官の分際で我が意に逆らうとは」
切れ長の眼(まなこ)に妖しい光と殺気が閃く。
充血した瞳は、あたかも瞳そのものが紅く光っているかのようだ。
「申せ、予のものになると今、ここで申すのだ」
両手を清花の頭のすぐ傍についているので、自然と王の腕の中に閉じ込められた形になる。
―怖い、誰か、来てっ、助けて。
何故か、その時、瞼に浮かんだのは朴内官の優しい笑みだった。
清花はあまりの怖ろしさに眼も開けられない。混乱と恐怖が眼尻に涙を押し上げてくる。
「お願い―でございます、許して」
「これでもまだ予を拒むというのか、ええ?」
王の両手が清花の細首にかかった。最初は緩く掴んでいるだけだったのが、徐々に力が加わってゆく。
コクリと小さく頷いた清花を射貫くように見据える王の双眸がカッと光る。
「―許さぬ」
王が呟き、清花はヌッと突き出た逞しい手に腕をいきなり掴まれた。
「後宮の女官はすべて国王のものだと決まっている。そなたの良人は王たる予以外にはおらぬ。それを、我が意を拒むとは何という身の程知らずな女か!」
腕を掴まれた清花は懸命に抗った。
「殿下、どうかお放し下さいませ。殿下、お願いでございます」
しかし、屈強な体軀の王と小柄な清花では所詮、大人と赤児ほどの力の差がある。
それでも暴れる清花に業を煮やしたのか、王がいきなり清花を強い力で後方へ突き飛ばした。石畳に背中と腰を強く打ちつけ、鋭い衝撃と痛みが走る。仰向けに倒れた清花の上から、すかさず王が覆い被さってきた。
「おのれ、女官の分際で我が意に逆らうとは」
切れ長の眼(まなこ)に妖しい光と殺気が閃く。
充血した瞳は、あたかも瞳そのものが紅く光っているかのようだ。
「申せ、予のものになると今、ここで申すのだ」
両手を清花の頭のすぐ傍についているので、自然と王の腕の中に閉じ込められた形になる。
―怖い、誰か、来てっ、助けて。
何故か、その時、瞼に浮かんだのは朴内官の優しい笑みだった。
清花はあまりの怖ろしさに眼も開けられない。混乱と恐怖が眼尻に涙を押し上げてくる。
「お願い―でございます、許して」
「これでもまだ予を拒むというのか、ええ?」
王の両手が清花の細首にかかった。最初は緩く掴んでいるだけだったのが、徐々に力が加わってゆく。