妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第2章 恋
この色こそ、まさしく自分のあの女への想いにふわさしい。女なぞ、抱いてしまえば皆同じだと思っていた。美しく装い、国王の気を引くことしか考えない。たとえ綺羅を纏い、どれほど美しく化粧しても、その内面はこの宮殿をさまよう幾多の怨霊よりもはるかに醜く怖ろしい。
側室同士が上辺は笑顔で話していても、心の内では国王の寵愛を巡って夜叉と化し互いに牽制し合っていることを、彼は知らぬわけではない。その醜さがたまらなかった。
まだしも亡くなった王妃の権高さの方がマシだったとさえ思うほどだ。笑顔で、まるで愛猫が飼い主に甘えて媚を売るように、側室たちは彼にすり寄ってくる。初めは、そんな女たちの嘘が見抜けず、可愛いものだと思っていたけれど、二十歳になった今では、彼女たちの醜い下心は嫌でも透けて見えてくる。
―私こそが国王殿下第一の寵姫よ。
―何を申すか、この私こそが殿下の恩寵を受け、元子の生母となるに決まっている。
そんな生の声が聞こえてきそうで、この頃は側室たちを寝所に召すのも次第に間遠になり、一人夜更けまで大殿で酒を呑んでいる始末だった。
そんな時、清花が眼の前に現れた。
後宮という広大で豪奢な庭園に咲くには、いささか地味かもしれない。池の畔にひっそりと花開く可憐な白い花のような風情の少女は具清花といった。
けして美人というわけではないが、黒眼がちの大きな瞳がいつも潤んでいるようで、じっと見ていると、その深みに吸い込まれ溺れてしまいそうだ。
側室同士が上辺は笑顔で話していても、心の内では国王の寵愛を巡って夜叉と化し互いに牽制し合っていることを、彼は知らぬわけではない。その醜さがたまらなかった。
まだしも亡くなった王妃の権高さの方がマシだったとさえ思うほどだ。笑顔で、まるで愛猫が飼い主に甘えて媚を売るように、側室たちは彼にすり寄ってくる。初めは、そんな女たちの嘘が見抜けず、可愛いものだと思っていたけれど、二十歳になった今では、彼女たちの醜い下心は嫌でも透けて見えてくる。
―私こそが国王殿下第一の寵姫よ。
―何を申すか、この私こそが殿下の恩寵を受け、元子の生母となるに決まっている。
そんな生の声が聞こえてきそうで、この頃は側室たちを寝所に召すのも次第に間遠になり、一人夜更けまで大殿で酒を呑んでいる始末だった。
そんな時、清花が眼の前に現れた。
後宮という広大で豪奢な庭園に咲くには、いささか地味かもしれない。池の畔にひっそりと花開く可憐な白い花のような風情の少女は具清花といった。
けして美人というわけではないが、黒眼がちの大きな瞳がいつも潤んでいるようで、じっと見ていると、その深みに吸い込まれ溺れてしまいそうだ。