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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第2章 恋

 色は雪のように白く、実際にチョゴリを脱がせてみたら、肩から胸にかけては眩しいほどの白さだった。小柄な割には、胸の膨らみも十分なようで、愛らしい紅い先端を口に含んで吸ってやれば、どんなに切なく甘い啼き声で歌うだろう。唇は桜花のように可愛らしく、まるで花びらのようだ。口付ければ、さぞかしやわらかく、しっとりとしているだろう。
 あの漆黒の瞳に沈み、溺れてしまいたい。
 あの少女を見ていると、そんな気になってくる。最初は井戸端で白い脹ら脛を惜しげもなく露わにしているその姿に眼を奪われ、そそられた。別に裸を見せたわけでもないのに、あの白い膚をかいま見ただけで、烈しい欲望を憶えて、すぐその場にでも押し倒して、我が物にしてしまいたいほど身体が熱くなった。
 だが、実を言えば、彼があの娘に魅せられている真の理由は、彼女の容貌でも魅力的な身体でもない。清花は王がこれまで傍に置いたどの女とも違う。
 お人好しといえるくらい人が好くて、自分のことはいつも後回しで、とことん優しい。
―私は入宮してから、哀しいときや挫けそうになったときは、この簪を見て自分を励ましてきました。この簪が父だと思って―、優しい父の笑顔を瞼に思い描いて乗り越えてきました。だから、今度は殿下が―こんなものでよければ、この簪を見て、負けるものかとご自分を励まして下さい。
 突然のあの科白には正直、戸惑ったが、悪い気はしなかった。亡くなった父の形見だという簪は、あの娘にとって、どれほど大切なものかくらいは自分にも判る。その父の形見を惜しげもなく自分に譲ると言った、あの心。
 そして、近頃、暑さにやられて食の進まぬ祖母のために生菓房でデザートを手作りしたその心根の優しさ。

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