妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第2章 恋
「そのような言い方をなさらないで下さい」
朴内官が訝しげな視線を向ける。
「朴内官は内侍として優れているだけでなく、お心の優しいお方です。こんなことを言うのは失礼だとは承知していますが、内官になるのもまた女官と同様、家の事情が関係していると聞きました。きっと朴内官が誰にでも優しいのは、痛みを知る方だからだと思います」
その時、清花は漸く判った。若き王が何故、ああまで冷酷であり、自分勝手にふるまえるのか。
王は他人(ひと)の痛みを知らない、知ろうとしない。それは王子として生まれ、宮殿で育った王には致し方のないことかもしれない。わずか十二歳の幼さで即位し、至高の位についた彼に他者の痛みを知る機会は殆どなかったろう。
もっとも、たとえ王といえども、痛みを知ろうと思えば知ることはできたし、少なくとも知ろうと努力することはできたはずだ。
だが、王はその努力を怠った。やはり、それは〝国の父〟として尊崇を受ける国王としては失格なのではないか。
清花には政治的なことや難しい理屈は何も判らないけれど、それくらいのことは理解できる。真に優れた為政者というのは、多分、他人の、民の痛みを知り、理解できる人なのだろう。
「そなたは国王殿下を嫌いか?」
さらりと言った問いは、実は大変な意味合いを持つものだった。
清花は弾かれたように貌を上げ、朴内官を見つめた。
朴内官が訝しげな視線を向ける。
「朴内官は内侍として優れているだけでなく、お心の優しいお方です。こんなことを言うのは失礼だとは承知していますが、内官になるのもまた女官と同様、家の事情が関係していると聞きました。きっと朴内官が誰にでも優しいのは、痛みを知る方だからだと思います」
その時、清花は漸く判った。若き王が何故、ああまで冷酷であり、自分勝手にふるまえるのか。
王は他人(ひと)の痛みを知らない、知ろうとしない。それは王子として生まれ、宮殿で育った王には致し方のないことかもしれない。わずか十二歳の幼さで即位し、至高の位についた彼に他者の痛みを知る機会は殆どなかったろう。
もっとも、たとえ王といえども、痛みを知ろうと思えば知ることはできたし、少なくとも知ろうと努力することはできたはずだ。
だが、王はその努力を怠った。やはり、それは〝国の父〟として尊崇を受ける国王としては失格なのではないか。
清花には政治的なことや難しい理屈は何も判らないけれど、それくらいのことは理解できる。真に優れた為政者というのは、多分、他人の、民の痛みを知り、理解できる人なのだろう。
「そなたは国王殿下を嫌いか?」
さらりと言った問いは、実は大変な意味合いを持つものだった。
清花は弾かれたように貌を上げ、朴内官を見つめた。