妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第3章 忍
先頭の女官の顔に見憶えがあると思ったら、何のことはない、数人の女官はすべて同じく張尚宮の許で働く娘たちばかりではないか。
よもや、その先頭に立つ女官が、王と清花が一緒にいる場面―正確には手籠めにされようとした一部始終を見ていたのと同じ人物だとは知るはずもない。一体何事かと固唾を呑んで見つめていると、彼女たちは次第に近付いてくると、清花の前でピタリと止まった。
「具女官、近頃、少しお高くとまってるんですねってね」
先頭に立つ娘にいきなりなことを言われ、清花は眼を丸くした。
「一体、何の話?」
「空惚(そらとぼ)けないでよ」
背後から別の声が上がる。
「だから、私が何をしでかしたっていうの?」
堪らなくなって叫ぶ。身に憶えのあることなら、きちんと認め謝りもできるが、全く心当たりのないことなのだから、すべがない。
先頭の娘が腕を組んで尊大な態度で言った。
「あなた、近頃、仲好くしていた春枝とろくすっぽ口もきかないんですって? おまけに二人で担当していた仕事まで全部春枝に押しつけてるっていうじゃないの」
「馬鹿言わないで」
よほど本当のことを言ってしまおうかとも考えた。今の状況を見ても、丸わかりではないか。仕事を怠けていないはずの春枝が彼女たちの群れに混じって、仕事を春枝一人に押しつけているはずの清花がこうして、せっせと一人で洗濯に勤しんでいるのだ。
なのに、彼女たちはどうして、こんな言いがかりをつけるのだろうか。一つ考えられるのは、自分が何か彼女たちの反感を買うようなことをしでかしてしまった―ということだ。
よもや、その先頭に立つ女官が、王と清花が一緒にいる場面―正確には手籠めにされようとした一部始終を見ていたのと同じ人物だとは知るはずもない。一体何事かと固唾を呑んで見つめていると、彼女たちは次第に近付いてくると、清花の前でピタリと止まった。
「具女官、近頃、少しお高くとまってるんですねってね」
先頭に立つ娘にいきなりなことを言われ、清花は眼を丸くした。
「一体、何の話?」
「空惚(そらとぼ)けないでよ」
背後から別の声が上がる。
「だから、私が何をしでかしたっていうの?」
堪らなくなって叫ぶ。身に憶えのあることなら、きちんと認め謝りもできるが、全く心当たりのないことなのだから、すべがない。
先頭の娘が腕を組んで尊大な態度で言った。
「あなた、近頃、仲好くしていた春枝とろくすっぽ口もきかないんですって? おまけに二人で担当していた仕事まで全部春枝に押しつけてるっていうじゃないの」
「馬鹿言わないで」
よほど本当のことを言ってしまおうかとも考えた。今の状況を見ても、丸わかりではないか。仕事を怠けていないはずの春枝が彼女たちの群れに混じって、仕事を春枝一人に押しつけているはずの清花がこうして、せっせと一人で洗濯に勤しんでいるのだ。
なのに、彼女たちはどうして、こんな言いがかりをつけるのだろうか。一つ考えられるのは、自分が何か彼女たちの反感を買うようなことをしでかしてしまった―ということだ。