妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第3章 忍
春枝だけは味方だと信じていた。だが、やはり甘かったのだろうか。親友だと信じていたのは、自分一人だけだったのだろうか。
と、春枝が叫ぶように言った。
「女官でいる限り、私たちは好きな男に嫁ぐことなんてできない。だったら、ただ一人の良人である国王殿下の寵を得るしかないじゃない。でも、現実として殿下の寵を賜ることのできる女官なんて、ひと握りどころか、せいぜいが数人程度のものよ。なのに、清花、あなたはその類稀な幸運な女として選ばれた。何で、あなたなの? 私より美人でもなくて、機転も利かなくて、いつも失敗ばかりして叱られているあなたがお妃になれるのよ? そう思ったら、悔しくて悔しくて、堪らなかった」
春枝がキッとして睨む。
「私にだって、人並みの感情はある。一体私を何だと思ってたの? あんたの話をふんふんと聞いて、あんたの都合の良い期待してるような応えをくれるだけの相手だとでも? あなたが大王大妃さまからお誉めの言葉を賜り、ご褒美として高価な腕輪を頂いたことだって、私が心底から妬んでないとでも思っていたの? これ見よがしに頂いた腕輪を見せられて、何も感じないと思ってた? もし、本気でそんな風に考えていたのなら、あんたは他人の心をちっとも理解しようとしない、たいした思い上がり女よ」
「ごめんなさい、春枝。私、あなたがそこまで嫌な想いをしていたなんて、全然知らなくて」
清花は唇を噛む。涙が溢れそうになり、慌てて堪(こら)えた。
「あなたって、いつもそうね。自分一人が犠牲者だと思い込んで、我慢しているのは自分だけだと良い子ぶろうとする。私は昔から、あなたのそんなところが大嫌いだったの」
春枝は言葉を投げつけるように言い放つ。
と、春枝が叫ぶように言った。
「女官でいる限り、私たちは好きな男に嫁ぐことなんてできない。だったら、ただ一人の良人である国王殿下の寵を得るしかないじゃない。でも、現実として殿下の寵を賜ることのできる女官なんて、ひと握りどころか、せいぜいが数人程度のものよ。なのに、清花、あなたはその類稀な幸運な女として選ばれた。何で、あなたなの? 私より美人でもなくて、機転も利かなくて、いつも失敗ばかりして叱られているあなたがお妃になれるのよ? そう思ったら、悔しくて悔しくて、堪らなかった」
春枝がキッとして睨む。
「私にだって、人並みの感情はある。一体私を何だと思ってたの? あんたの話をふんふんと聞いて、あんたの都合の良い期待してるような応えをくれるだけの相手だとでも? あなたが大王大妃さまからお誉めの言葉を賜り、ご褒美として高価な腕輪を頂いたことだって、私が心底から妬んでないとでも思っていたの? これ見よがしに頂いた腕輪を見せられて、何も感じないと思ってた? もし、本気でそんな風に考えていたのなら、あんたは他人の心をちっとも理解しようとしない、たいした思い上がり女よ」
「ごめんなさい、春枝。私、あなたがそこまで嫌な想いをしていたなんて、全然知らなくて」
清花は唇を噛む。涙が溢れそうになり、慌てて堪(こら)えた。
「あなたって、いつもそうね。自分一人が犠牲者だと思い込んで、我慢しているのは自分だけだと良い子ぶろうとする。私は昔から、あなたのそんなところが大嫌いだったの」
春枝は言葉を投げつけるように言い放つ。