妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第3章 忍
「あなたの言うとおり、私は少しも他人の気持ちを理解しようとしなかった。あなたの心なんて考えもせずに、勝手にあなたの心を想像していたわ」
「―もう良いだろう。崔女官、これだけ言えば、十分ではないか。これ以上、具女官を追いつめるな」
朴内官の言葉に、春枝は肩をすくめた。
くるりと背を向けると、足早に去ってゆく。
―あんたは他人の心をちっとも理解しようとしない、たいした思い上がり女よ。
―私は昔から、あなたのそんなところが大嫌いだったの。
春枝の声が耳奥で幾度もこだまする。
今まで無二の親友だと信じて疑わなかった春枝からの攻撃は、清花に烈しい衝撃を与えた。
虚ろな心を抱えたまま、清花はしゃがみ込むと、汚れた洗濯物を一つ一つ拾ってゆく。
「全っく、ひどいことをする」
朴内官も〝手伝おう〟と、泥まみれの洗濯物を拾い始めた。
「気にするなと言う方が無理かも知れないが、具女官、あまり気にしない方が良い。他の女官からの妬みややっかみは、国王殿下の寵を受けた女人にはありがちなことだ」
労りに満ちた言葉に、清花はゆるりと首を振った。
「私は殿下の寵を受けてなどおりません」
とうとう溢れ出した涙がつうっと頬を流れ落ちた。
朴内官がハッとした表情になる。
「済まない、私の言葉が足りなかった。具女官、他の誰が何と言おうと、私はそなたが誰より心の優しい女(ひと)だと知っている。つまらぬ中傷などに負けずに、持ち前の明るさで乗り越えるんだ」
彼の言葉の一つ一つが清花の心に滲みてゆく。
「―もう良いだろう。崔女官、これだけ言えば、十分ではないか。これ以上、具女官を追いつめるな」
朴内官の言葉に、春枝は肩をすくめた。
くるりと背を向けると、足早に去ってゆく。
―あんたは他人の心をちっとも理解しようとしない、たいした思い上がり女よ。
―私は昔から、あなたのそんなところが大嫌いだったの。
春枝の声が耳奥で幾度もこだまする。
今まで無二の親友だと信じて疑わなかった春枝からの攻撃は、清花に烈しい衝撃を与えた。
虚ろな心を抱えたまま、清花はしゃがみ込むと、汚れた洗濯物を一つ一つ拾ってゆく。
「全っく、ひどいことをする」
朴内官も〝手伝おう〟と、泥まみれの洗濯物を拾い始めた。
「気にするなと言う方が無理かも知れないが、具女官、あまり気にしない方が良い。他の女官からの妬みややっかみは、国王殿下の寵を受けた女人にはありがちなことだ」
労りに満ちた言葉に、清花はゆるりと首を振った。
「私は殿下の寵を受けてなどおりません」
とうとう溢れ出した涙がつうっと頬を流れ落ちた。
朴内官がハッとした表情になる。
「済まない、私の言葉が足りなかった。具女官、他の誰が何と言おうと、私はそなたが誰より心の優しい女(ひと)だと知っている。つまらぬ中傷などに負けずに、持ち前の明るさで乗り越えるんだ」
彼の言葉の一つ一つが清花の心に滲みてゆく。