妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第3章 忍
清花は大粒の涙を流しながら、何度も頷いた。
次の瞬間、清花は我が身に起きたことが俄には信じられなかった。ふわりと朴内官の逞しい腕に包み込まれ、清花は眼をまたたかせる。
これは夢? あまりにも信じられない幸せに、もうちょっとで頬をつねるところだった。
「私は、そなたを信じている。そなたには何も恥じるところはない」
大きな両手で頬を挟み込まれる。
間近に迫った朴内官の顔が更に近づき、やがてごく自然に二人の唇は重なった。
最初はついばむような軽い口づけが次第に深くなる。ふっくらとした唇を舌先でつつかれ、くすぐったさにわずかに唇を開くと、その隙を逃さず、男の舌が侵入してきた。逃げ惑う舌を絡め取られ、吸い上げられる。
清花は口づけも初めてなら、こんなに深い口づけがあることさえ知らなかった。
角度を変えた口づけは長い間、続いた。
舌先で歯茎までを丁寧になぞられたが、我ながら不思議なことに、嫌悪感は少しも感じなかった。
やっと顔が離れた時、清花は長い接吻で潤んだ瞳で朴内官を見上げた。腫れた唇が濡れて艶めかしい。
朴内官は迸る感情を抑えつけるかのように、清花をもう一度強く抱きしめ、腕の中に閉じ込めた。
「具女官に一つだけ訊きたいことがある」
「何でしょう?」
真っすぐに朴内官を見つめるのが少し照れ臭い。清花が頬を上気させながら小首を傾げると、彼は真摯な眼を向けた。
「そなたの母御がそなたのために縫ったあの婚礼衣裳を着たいと思ったことはあるか? あれを着て好きな男の傍に立ちたいと夢見たことはあるか―?」
あまりにも唐突な問いだった。
次の瞬間、清花は我が身に起きたことが俄には信じられなかった。ふわりと朴内官の逞しい腕に包み込まれ、清花は眼をまたたかせる。
これは夢? あまりにも信じられない幸せに、もうちょっとで頬をつねるところだった。
「私は、そなたを信じている。そなたには何も恥じるところはない」
大きな両手で頬を挟み込まれる。
間近に迫った朴内官の顔が更に近づき、やがてごく自然に二人の唇は重なった。
最初はついばむような軽い口づけが次第に深くなる。ふっくらとした唇を舌先でつつかれ、くすぐったさにわずかに唇を開くと、その隙を逃さず、男の舌が侵入してきた。逃げ惑う舌を絡め取られ、吸い上げられる。
清花は口づけも初めてなら、こんなに深い口づけがあることさえ知らなかった。
角度を変えた口づけは長い間、続いた。
舌先で歯茎までを丁寧になぞられたが、我ながら不思議なことに、嫌悪感は少しも感じなかった。
やっと顔が離れた時、清花は長い接吻で潤んだ瞳で朴内官を見上げた。腫れた唇が濡れて艶めかしい。
朴内官は迸る感情を抑えつけるかのように、清花をもう一度強く抱きしめ、腕の中に閉じ込めた。
「具女官に一つだけ訊きたいことがある」
「何でしょう?」
真っすぐに朴内官を見つめるのが少し照れ臭い。清花が頬を上気させながら小首を傾げると、彼は真摯な眼を向けた。
「そなたの母御がそなたのために縫ったあの婚礼衣裳を着たいと思ったことはあるか? あれを着て好きな男の傍に立ちたいと夢見たことはあるか―?」
あまりにも唐突な問いだった。