妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第3章 忍
今夜、清花の白い膚にもふんだんに香油が塗り込まれているのだろう。やわらかな白い膚を王の手がまさぐり、良い匂いのする身体を他の男が思いどおりにするのだ。
想像しただけで、身の内がカッと熱くなり、怒りに我を忘れそうになる。
「それでは、参ります」
もう一人の内官の声を合図として、一同は進み始める。清花を背負った朴内官、更にその後から張尚宮や女官たちが続く。大切な女人を背負う朴内官の脚許を傍らから若い女官が雪洞で照らした。
予想どおり、彼の身体に直接触れる清花の身体はとてもやわらかい。清花の白い身体を蹂躙する王の姿や王に組み敷かれて切なげな声を洩らす清花の姿が眼の前にちらつく。
幾ら追い払おうとしても、哀しい妄想はなかなか消えてくれなかった。
どれだけ歩いただろうか、朴内官は背負った女の身体が小刻みに震えているのに気付いた。それも大殿が近くなるにつれて、その震えはいっそう烈しくなってゆく。
内官に背負われる妃は目隠しをされることになっている。何かの意味があるらしいが、目隠しをして夜着を着たその肩に真新しいチマを掛ける。今宵、清花にも真新しい華やかな色のチマが張尚宮の手によって掛けられていた。
そのチマが大王大妃から贈られたものだとは、彼が知る由もない。機転を効かせて干し棗のゼリーを作ったあの女官が新たな側室となる―、そう聞いた大王大妃は孫のために素直に歓んだ。
―あのように心優しき賢い娘が主上のお側に上がれば、私も安心だ。こうなったからには、一日も早く二人の間に王子ご生誕を願うのみよ。
大王大妃は顔をほろこばせてそう言い、初夜を迎える美しい花嫁の纏うチマを贈ったのである。
想像しただけで、身の内がカッと熱くなり、怒りに我を忘れそうになる。
「それでは、参ります」
もう一人の内官の声を合図として、一同は進み始める。清花を背負った朴内官、更にその後から張尚宮や女官たちが続く。大切な女人を背負う朴内官の脚許を傍らから若い女官が雪洞で照らした。
予想どおり、彼の身体に直接触れる清花の身体はとてもやわらかい。清花の白い身体を蹂躙する王の姿や王に組み敷かれて切なげな声を洩らす清花の姿が眼の前にちらつく。
幾ら追い払おうとしても、哀しい妄想はなかなか消えてくれなかった。
どれだけ歩いただろうか、朴内官は背負った女の身体が小刻みに震えているのに気付いた。それも大殿が近くなるにつれて、その震えはいっそう烈しくなってゆく。
内官に背負われる妃は目隠しをされることになっている。何かの意味があるらしいが、目隠しをして夜着を着たその肩に真新しいチマを掛ける。今宵、清花にも真新しい華やかな色のチマが張尚宮の手によって掛けられていた。
そのチマが大王大妃から贈られたものだとは、彼が知る由もない。機転を効かせて干し棗のゼリーを作ったあの女官が新たな側室となる―、そう聞いた大王大妃は孫のために素直に歓んだ。
―あのように心優しき賢い娘が主上のお側に上がれば、私も安心だ。こうなったからには、一日も早く二人の間に王子ご生誕を願うのみよ。
大王大妃は顔をほろこばせてそう言い、初夜を迎える美しい花嫁の纏うチマを贈ったのである。