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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第3章 忍

 ただ清花の身体を欲望のままに犯し、弄ぶだけだ。幼い子どもが欲しがっていた玩具(おもちや)を漸く与えられたときの嬉々とした様子に似ている。
 初めて男に触れられる清花の気持ちなど、いささかも思いやるつもりはなく、ただ自分の欲情さえ満たせれば良いのだろう。
 住んでいる殿舎から大殿に来る間中、彼女は朴内官に背負われていた。あの残忍で女好きな王に抱かれるのかと思えば、恐怖に身体が震えた。そんな清花を朴内官は立ち止まり、優しく子どもをあやすような手つきで宥めてくれた。
 せめて、この方に朴内官の優しさの十分の一でもあれば。
 そう考えて、清花は我知らず朴内官と王を比べていたことにハッとした。
 王にこうして抱かれながらも、自分はまだ朴内官のことを考えている。
 この時、清花は気付いたのだ。
 やはり、自分にはあの男しかいないと。
 たとえ、どれほど自分を騙したとしても、本当の気持ちは偽れない。
 私は、あの方を愛しているのだ。
 真実の想いから眼を背けられないと知れば、今の状況に耐えられるはずもなかった。
 王の手は容赦がなかった。乳房を揉む手が烈しくなれば、秘所に差し入れられた指も同じように烈しくうごめく。しかも、気付かない間に、指は二本、三本と増やされていた。
 狭い箇所を指でおしひろげられれば、ひりひりと裂けるような灼けつくような痛みが入る。
「どうだ、少しは気持ちよくなったか?」
 顔を覗き込まれても、感じるのはただ痛みだけだ。
「そろそろ痛いだけではなくなってきているのではないか? 感じているのだろう、ん?」
 涙で曇った眼を力なく動かしたその時、華奢な肢体が大きくビクンと跳ね上がった。

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