妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第3章 忍
今、語り合わなければ、二度と、夢見ることができないように性急に、将来を語ろうとするのだろう。
いや、清花は既に判っていた。
内侍となった朴内官に、子をなすことはできない。二人の間に可愛い娘が生まれることなど、未来永劫ありはしないのだ。
二人とも、恐らく実現することはないであろう予感を抱きながら、なお、現実から眼を背け、未来を夢見ようとする。否、苛酷すぎる現実が判っているからこそ、自分たちは、ありもしない未来を、見果てぬ夢を語るのだ。
義禁府の追及の手を逃れることなど、できはしない。
自分たちが生きて宮殿の外に出ることはないだろう。
「でも、残念だ。私は男根を失っているから、子どもを持つことはできない」
清花は微笑んだ。
「良いの。自分の子を持つことはできなくても、貰いっ子を貰えば良いわ。身寄りのない赤ン坊を引き取って育てるの」
「それもそうだな。名前は―」
「萬(マン)花(ファ)、幾つもの花が集まったような、明るくて美しくて優しい女の子になるのよ」
「萬花か、良い名だ。きっと、清花のような美人で優しい娘になるだろう」
朴内官が呟いたその瞬間だった。
「居たぞ、こっちだ!」
高らかに声が上がり、朴内官が立ち上がった。
「まずい、見つかってしまったようだ」
二人で頷き合う。
再び手を取り合い、走り出したが、直に大勢の義禁府の兵にゆく手を阻まれてしまった。後退しようとしても、そちらからもわらわらと人が集まってきて、取り囲まれてしまった。
いや、清花は既に判っていた。
内侍となった朴内官に、子をなすことはできない。二人の間に可愛い娘が生まれることなど、未来永劫ありはしないのだ。
二人とも、恐らく実現することはないであろう予感を抱きながら、なお、現実から眼を背け、未来を夢見ようとする。否、苛酷すぎる現実が判っているからこそ、自分たちは、ありもしない未来を、見果てぬ夢を語るのだ。
義禁府の追及の手を逃れることなど、できはしない。
自分たちが生きて宮殿の外に出ることはないだろう。
「でも、残念だ。私は男根を失っているから、子どもを持つことはできない」
清花は微笑んだ。
「良いの。自分の子を持つことはできなくても、貰いっ子を貰えば良いわ。身寄りのない赤ン坊を引き取って育てるの」
「それもそうだな。名前は―」
「萬(マン)花(ファ)、幾つもの花が集まったような、明るくて美しくて優しい女の子になるのよ」
「萬花か、良い名だ。きっと、清花のような美人で優しい娘になるだろう」
朴内官が呟いたその瞬間だった。
「居たぞ、こっちだ!」
高らかに声が上がり、朴内官が立ち上がった。
「まずい、見つかってしまったようだ」
二人で頷き合う。
再び手を取り合い、走り出したが、直に大勢の義禁府の兵にゆく手を阻まれてしまった。後退しようとしても、そちらからもわらわらと人が集まってきて、取り囲まれてしまった。