ガーディスト~続編~
第8章 視えない男(中編)
「浅井さん!」
玄関にたどり着くと、扉を全開にしたまま浅井が座り込んでいるのが見えた。
「浅井さ……うっ…」
玄関に踏み込むとなんともいえない悪臭がし、吐き気が催してくる。
「…だめです、戻りましょう…」
手で口を押さえながら、祐司は浅井の肩を掴んだ。
「…私は…私は、もうだめです…」
「何言ってるんですか、ここにいたら…あなたまでとり憑かれてしまいます…!」
「…いいんです…こんな身勝手な自分は、霊にとり憑かれて死んでしまえばいいんだ…」
そう言うと浅井はゆっくりと立ち上がり、奥へと足を進ませる。
「浅井さんっ…しっかりしてください!!」
よく見ると浅井の周りに、どす黒い霧のようなものがまとわりついていた。
浅井はすでにとり憑かれたように、ブツブツと呟きながら奥へと進んだ。
「…くっ…!」
体が思うように動かない。
まるで水の中にいるように、うまく呼吸ができない。
それでも浅井の姿を見失わんと、祐司は一歩一歩前に進んだ。
まだ日中のはずなのに、辺りは真っ暗だ。
ラップ音なのか、ピシピシとあちこちで音がする。
「…ハアッ…ハア…」
祐司の息遣いだけが、辺りに響いた。
奥に行けば行くほど、息苦しくなる。