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精霊と共に 歩睦の物語

第7章 夏の剣道大会…

     *

 頭の上で手ぬぐいをシッカリ引っ張ってたるまないように微調整をしている歩睦の穏やかな顔つきは、試合を目の前に気合が入ったキリッとした表情になっている。

 審判が試合場に立つ頃までに面をつける。


「では、今年の中学部決勝を始めます。選手!前へ」
 拍手があちこちから沸きあがる。

「歩睦。頑張れよ」
 涼が声をかける。

「ああ、がんばるよ」
 籠手を軽く当て、歩睦は試合に向った。


『――赤 南中学二年北沢賢人君 白 東中学二年土居歩睦君――』
 館内放送が体育館に響く。

「兄ちゃん頑張れ」
 実のかわいい声援が聞える

 歩睦は二階席の方に腕を上げてその声援にこたえる。


 歩睦と北沢はお互いに向かい合い礼をする。

 3歩前に出て、竹刀を構えながら〈そんきょ〉をして剣先を交える。

 主審の「はじめ」の合図を待つ。

(北沢君…)
 歩睦は剣先の向こう側の北沢を見つめる。

「はじめ!」

「せりゃあっ!」
「うらああ!」
 お互い立ち上がって試合開始。


「おらあああ!」
 奇襲攻撃の北沢。

「くっ!」
 横に飛び逃げる歩睦。

「おらぁ!!」
 逃げる歩睦を追うように竹刀を横から当ててくる北沢。

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