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「はぁああ！」
　歩睦がその言葉を聴く間もなく、打ち込んでいく。

　有効打がない。
　このままだ時間が来れば歩睦の一本勝ちになる。

「時間です」
　タイムを取っている人が旗を揚げた。

「止め」
　主審が、試合を止める。

　ワーっと観戦者が声を上げる。
　たくさんの歓声と拍手が歩睦の勝利をたたえる。

　歩睦は竹刀を下ろして、元の位置にも戻ろうとする。

「……たな…わって…ない…」
　力なく竹刀を下ろした、ブツブツ言っている。

「北沢君、元の位置に戻りなさい！」
　副審の一人が北沢に声をかける。

「この…ま…し…ぃが…わる…かぁ…ぁぁ…ぁぁぁ」
　北沢の身体がユラユラゆれている。

　観戦していた周りの人が、ザワザワしている。

「北沢君？北沢君？…」
　異変に気付いた主審が、北沢の角皮あてに手を置く。

「！！うるせぇー邪魔するな！」
　叫び声をあげ、主審を突き飛ばす。

「ぎゃ！」
　主審はうめき声を上げて蹲っている。

「！！」
「やめなさい」
　副審が二人がかりで抑えようとする。

「わあぁ！」
「わあぁ！」
　副審達は為す術なくに飛ばされた。


「ぐぎゃぎゃぁぁ」
　北沢は大声を上げ、暴れ始めた。

「ぐぐががぁ」
　見る見る北沢の身体から赤黒いオーラをあふれてくる。