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精霊と共に 歩睦の物語

第9章 武器を取れ!

  『今年こそ、土居君に勝つんだ!』
 北沢が一心に素振りをしている。

  …そう…勝つんだ!勝てるさ…
 北沢の周りにまとわり付くような、黒い影。

  『勝つ!勝つ!勝つ!』
 黒い影の声を聞いて、素振りのスピードが上がる。よく見ると、竹刀が腕を融合している。

  …もっと、心から願え!お前の願いは力になる…
 黒い影は北沢の周りを舐める様に纏わりつく。

  『土居…を倒す…た、たかぁぅ、が、ぐぁががぁ』
 北沢の体がボコボコ波打ちはじめた。


「っ…」
 肩から腕にかけて痛みを感じる歩睦。

 夏休みに入ってすぐの学校に行く途中に捕まれた腕が痛い。

「なんで、いまさら…」
 歩睦は腕を擦る。

{痛い?防御が甘かったね…ごめんね…}
 ユティルが歩睦の腕をさわると痛みが消える。

「あぁぁ…痛くなくなった…すごい!」
 肩をグルグル回す歩睦。

{もう…あんな『彷徨く者』なんかに、ダメージ受けないように僕、頑張るから!}
 ユティルが両手を胸の前でグーにする。

「うろつく者?」

{うん。実体のない『彷徨く者』は霊力の有る者に寄生して、力を喰い尽くす…嫌な奴さ}

「力を喰い尽くされたら、どうなる?」

{依り代は死ぬ…}

「死ぬ…じゃ、早く、何とかしないとだね…でも、どうやって、北沢くんを傷つけずに黒いのを倒せるかな?」
 考え込む歩睦。

{え!考えてなかったの?}
 その歩睦を見てビックリするユティル。

「うん!なんか、逃げるより戦うかな?っ感じ」
 テヘッと笑ってみせる歩睦。

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