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精霊と共に 歩睦の物語

第9章 武器を取れ!

 歩睦と北沢はお互いに向かい合い礼をする。

 3歩前に出て、竹刀を構えながら〈そんきょ〉をして剣先を交える。

(試合…審判がいないのに…どうやって始めるのさ…)
 始めの号令を出してくれる審判がいない。


 胴面を着けていないから、正面に顔や体がある。

(このまま…打ち合えば、怪我するな…でも、今の北沢君は…)

 歩睦は、考えながら〈そんきょ〉したまま、北沢を見つめている。

 竹刀が微かに当たった瞬間。

  …始め…
 蚊の鳴くような始めの号令が耳の横を通って行く。

 ゾクっと体中に鳥肌か立つ。

「はあぁぁ!」
 北沢が竹刀を振り明け、突進してきた。

(ヤバイ…)
 歩睦はとっさに防御の姿勢をとる。


  ガンッ!ジュシュ…

 竹刀と竹刀が体の前でぶつける。

(ぅっ!…あれ??)
 歩睦は普段は防具で守られている所が直接北沢にぶつかるので、痛みを覚悟していたが……。

(…痛くない?ユティル?)
 歩睦がユティルを確認すると、ユティルがニコッと笑っている。

(そうか、今は、肉体じゃないから、痛みを感じ難いんだ…よし!)
 歩睦の竹刀の鍔に北沢の竹刀がしっかり当たっている鍔迫り合い状態を維持しながら、北沢に話しかける。

「北沢くん。ココから出よう!」
 歩睦が説得を始める。

「出る?どうして?」
 竹刀から伝わる力は緩むことなく、ジリジリ押してくる。

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