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精霊と共に 歩睦の物語

第9章 武器を取れ!

「こんな世界に閉じこもってないで、ちゃんと決着をつけよう!!はあぁ!」
 歩睦が竹刀を使って押し返す。

「わっ!」
 北沢は、押し返された力で、尻餅をつく。


「見てみろよ!ココには学校の友達も先生も…家族だっていない!」

 歩睦は両手を広げ、周りを見渡す。

「こんな…誰もいない世界で、僕と戦って勝っても、誰も知らない!
僕らは何の為に一年頑張ったんだよ。
去年の試合をちゃんと、決着をつける為だろ?」

 去年の試合は、準決勝であたった。
 お互い『勝ちたい』の気持ちが強くて、鍔迫り合いを繰り返していた。
 その競り合いの中『北沢君が僕の竹刀を握った』と判断され、北沢君の負けが決まった。
 相手の監督が異議の申し立てをしていたが、判定は覆らなかった。

 僕もその時の事を今でもおかしいと思っている。


「…決着?…あの試合は僕が勝っていた…そうさ…僕は君に勝ってたのに…」
 北沢は尻餅をついた状態で、ブツブツ言っている。


 見る見る北沢のまわりに黒い影が集まってくる。

  …力を使え…さればもっと強くなる…
 『彷徨く者』の囁きが北沢の心を支配する。


「き、北沢君…」
 心配して歩み寄る歩睦。

{歩睦。ダメだ…心が壊れかけてる…}
 ユティルが歩睦を止める。


「そうだ…そうだよね…僕には力がある…」
 北沢が両手を上げて、笑い出す。

「土居君!ゴメンゴメン、試合中だったねぇ」
 北沢がユラッと立ち上がった。

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