無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　北沢は吹き飛んだ遥香に向かっていく。

「やめろ！なにするんだ！」
　歩睦が北沢を止める。

「離せ！！」
　北沢は竹刀を振り回す。

「や、めろ！」
　歩睦は北沢を突き飛ばして、遥香に駆け寄る。

「遥香！遥香！」
　歩睦は倒れている遥香を抱き抱える。

「！」
　遥香を抱き抱えた手に暖かいモノを感じる。

　歩睦は震える自分の手を遥香の頭から離して、掌を確認する。

　ベットリと赤い液体が…

　よく見ると、額や頬から滲むように流れている。


「あ！あぁ…」
　歩睦は震えだす。

「遥香…ごめん…ごめんね。マタ…また…怪我させた。もう、絶対怪我させないって約束したのに…」
　歩睦はみるみる青ざめる遥香を抱き締める。


　北沢が、竹刀をズルズル引きずりながら、近づいてくる。

「北沢！遥香は関係ないだろ！どうしてこんなことする」

　平常心を失っている歩睦。
　歩睦の側にある竹刀が揺らめいている。

「コイツがいると、土居君はオレを見ない…」


「そっそんな事で…」
　歩睦が北沢を睨みつける。
　歩睦の回りにも黒い影が集まり始める。


　　…いいぞ！覚醒しろ！
　黒い影が人の形になっていく。