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精霊と共に 歩睦の物語

第9章 武器を取れ!

「きったざわぁああ」
 歩睦が北沢を睨みつけながら立ち上がる。

{歩睦!落ち着いて}
 ユティルが止める。

「やかましい!」
 ユティルの制止を一喝する歩睦。

{歩睦!}
 ユティルの声さえ聞き入れない。


 歩睦は竹刀を構え、戦闘体制になる。

『グアァァーーーー』
 北沢が獣のような雄叫びを上げた。

『うわあああ』
 歩睦も常軌を失っている。

 二人は竹刀をただ叩きつけるだけの戦いをしている。

 歩睦の竹刀から溢れているのは、輝きでなく黒いモヤ。

{歩睦に『淀み』が生まれている!何とかしないと!… …… …}
 ユティルは両手で祈るように重ね呪文を唱え始める。


  …おお!すばらしい!やはり逸材であった!
 黒い人型のものは、はっきりした男性の姿になった。

 「おお。わが姿…」
 男性は肩を触り、頬を触り、自分の肉体を感じていた。


{歩睦に加護を!}
 ユティルが歩睦に光の粉を振り掛ける。

「あぁ…」
 歩睦の身体が輝く。

  …チィ…もう少しの所を…
 歩睦の周りの黒い影が拡散すると同時に、男性の姿も消える。


{歩睦!僕の声を聞いて!}
 ユティルが歩睦の周りに飛んでいく。

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