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精霊と共に 歩睦の物語

第9章 武器を取れ!

「ユ、ユティル…僕は…」
 正気に戻った歩睦。

「あ!柄が焦げてる…どうして?僕が持っていた所だけこげるって…」
 竹刀の柄が焦げたように黒くなっているのに気付く。

{それは歩睦の『淀み』でなったんだ…}

「ヨドミ?」

{『淀み』霊力が本来の流れに流れなくなった時の呼び名。『彷徨く者』の力の根源だよ}

「根源…あ!北沢君は!」
 歩睦が周りを確認するが、北沢の姿がない。

「逃げられた?」
 再度確認すると、倒れた遥香が見えた。

「は、遥香!」
 歩睦は遥香のほうに駆け寄ろうとする。

{待って}
 ユティルが歩睦の額に掌を当てる。

「ユティル?」

 {聞える?}

「え?」

 {聞えるなら、瞬きして!}

 パチパチっ
 歩睦は言われたとおり、瞬きする。


 {僕はずっと歩睦の行動がおかしいと思っていた}
 ユティルの声が頭の中で響く。

 {なにもない所に駆け寄っていく歩睦。
 頭の中に映像が見える。

 {北沢も同様に何も無い所を見ている。
ここは彼の世界のはず。
なぜ彼より先に、歩睦が『遥香』と呼んだのか?
もしかして、ここは彼も囚われているのでは?}

(本当だ。おかしい…)
 ユティルと歩睦は同じ意見になった。


{僕の力を使って、思い出して…本当の時間軸を…}

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