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精霊と共に 歩睦の物語

第9章 武器を取れ!

 何もない、白い空間に漂う歩睦。



 最初に思い出したのは、涼と軽く腕を当て笑っている…光景。

  自分が見える…

{自分を、自分で見るのって、変だ感じだろ?}

  うん…

{…が、見ていた世界だよ…}

  ユティルの?…

 歩睦が声の方を向こうとする。

{見て!}

 声が眼下に広がる風景を見るように促す。

  あ、北沢君だ…
 黒いモヤに包まれた北沢が、歩いている。

  黒いモヤ…

{あの時は…もう囚われていたんだ…}

  そうだね…
(確かに、雰囲気悪かった…)


『――赤 南中学二年北沢賢人君 白 東中学二年土居歩睦君――』
 館内放送が体育館に響く…

「兄ちゃん頑張れ!」
 実の声が近くに聞える。

  試合…

 歩睦と北沢が、竹刀を構えながら〈そんきょ〉をして剣先を交ねている。

 主審の「はじめ」の合図で。試合が始まる。

 北沢の攻撃。逃げ切れない歩睦。

「てっ!!」
  ビシッとあたった所を押さえよろめく歩睦。

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