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精霊と共に 歩睦の物語

第10章 元に戻れるものは、戻して…

「ぅ…ぅん…」
 歩睦の顔に赤みが差す。

「はーよかった」
 楓が歩睦の体を抱きかかえている。

「…先輩…」
 歩睦が楓の腕を持って、起き上がろうとする。

「今、回復中だから…動かないで…」
 楓にグッと押さえつけられる。

「はは、すみません…」
 歩睦がハーと息を吐くと、体の力が抜けていく。

「もう…無理しちゃって、こんなに一遍に霊力遣ったら、肉体にも影響出るのよ!ホント!知らないって、怖い!」
 オネエ言葉の楓。

「大丈夫です。楓先輩が結界を張っててくれたおかげで、無理もできました…」
 歩睦が胸のペンダントを出した。

「結界をしってたの?」

「はい…この子がそばに居ると、不思議と理(ことわり)が分かります」
 歩睦が片手をあげると、15センチくらいの小人が、歩睦の体の上に現れた。

「この子が歩睦の『共にする者』…」

 ユティルが帽子を抜いて、頭を下げる。

「はじめまして…楓です」
 楓が笑顔で応対する。


「先輩…この石の力を開放してくれませんか?もう僕には力が無くて…」
 歩睦はペンダントから石を取ると、楓に渡す。

「『護りの石』を使うの?」

「石が教えてくれたんです…僕の今の願いは叶えれるって…」
 歩睦は、にこっと笑う。

「歩睦の願い……わかったわ。任せて…『願い開放』
 楓は歩睦から受け取った石の力を解放する。

 石はスゥーと浮いていき、優しい光に変わる。

 その光は体育館をゆっくり、もとの姿に戻していく。

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