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精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

「先輩…もう少し、落ち着いてから行きます…」
 歩睦は下を向いたまま考えている。

「そう…先、行ってるわ」
 楓はスライドドアをゆっくり開け出て行く。





 ピシャっとドアが閉まる。

(私では無理なのかしら…)
 楓の表情は暗い。



「楓先輩!」
 外に出ると、楓に駆け寄って来る女の子。

(きたわね!)
 楓は駆け寄ってきた女の子の方を向く。

「あら、菜の花さん」
 楓に駆け寄ってきたのは、遥香だった。

「菜畑(なばた)です!」
 遥香はいつもの事のように返事をする。

「あら、そうだったかしらぁ」
 楓は笑顔で応対するが、その目に優しさがない。

「あ、あの?歩睦…起きました?実君が待ってるんですがぁ?」
 遥香が、土居家族の方をチラッと見る。

 実が手を振っている。


「起きてると思うわよ!声かけたら?」
 挑発的な態度の楓。

「はーい。そうします!」
 遥香は、楓の提案に素直に従う。


「歩睦!入るわよ!」
 スライドドアを何の抵抗も無く開ける遥香。


「クッ…」
 唇を噛む楓。

(…分かっていたけど…悔しい…)


この車には結界が張ってある。
 そして、今さっき、もう一つ結界を張った。
 中に入るには、中にあるモノが許可するモノだけ。

(歩睦はこの子を許可している…)
 楓の体が小刻みに震えている。

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