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精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

 遥香 視点


(それにしても、歩睦はまだ寝てるのかしら?楓先輩が起こしに行ったのに、まだ、出てこないし…) 
 遥香は肉を焼きながら、チラチラ車を見る。

「気になりますか?」
 ニヤニヤしながら涼が遥香の焼く肉を狙ってきた。

「真鍋君。この肉は歩睦の分よ!自分の分は食べたでしょ!」
 遥香は焼いている肉を守ろうと手を広げる。

「先輩が寝込みを襲ってないといいね」
 涼が遥香に小声で言う。

「何言っているの!バッカじゃない!」
 少し顔を赤くして遥香は涼を睨む。

「すきあり!」
 肉を二枚、箸でつかんで離れる涼。

「コラ!もう!お皿に取っとかなきゃ!」
 遥香は、ある程度焼けた肉を皿に取る。

「歩睦ってさ、無自覚の無防備だろ?僕としては心配でぇ」
 涼が再び焼いているお肉の周りを歩く。

「そんなに食べたきゃ。これあげる」
 遥香は一緒に焼いていた、ピーマンやカボチャを涼の皿にドンドン入れる。

「僕はお肉が食べたいのに!」
 山盛りの野菜を見てシクシク泣く涼。


「遥香お姉ちゃん…」
 実が遥香の服を引っ張る。

「なに?実君」
 遥香は笑顔で実を見る。

「お兄ちゃん起こしてきて。お肉なくなっちゃう…」
 実が少し心配そうな顔をする。

「そうね。心配ね。起こして来てあげる。これ、お兄ちゃんのお肉だから、あの変なお兄ちゃんから守ってね」
 遥香は、泣きながら野菜を食べる涼を指差しながら、実に焼いた肉が乗った皿を渡す。

「わかった」
 実はお皿を持ってニコッと笑う。

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